自・公でも民主でもない庶民派候補が登場した。脱原発と反貧困を掲げて東京都知事選挙(11月29日告示、12月16日投票)に立候補する宇都宮けんじ・前日弁連会長(65歳)のキックオフ集会が今夜、中野区で開かれた。
宇都宮立候補予定者は1946年12月、愛媛県の半農半漁の村に生まれる。父親が傷痍軍人で生活は苦しかった。「小さい頃は米の飯を食ったことがなかった」と述懐する。
反貧困ネットワーク代表の宇都宮氏は、リーマンショックで派遣切りが吹き荒れた08年末、日比谷公園にできた年越し派遣村の名誉村長を務めた。多重債務者の立場から強欲サラ金業者と戦ったことでも有名だ。貧困を憎む原点は少年期の窮乏体験にあるようだ。
夕方7時から始まったキックオフ集会会場の中野ゼロホール(定員1300人)は満員となり、立ち見も出た。入りきれない人はロビーのモニター画面で見守った。
司会者に促されて宇都宮氏は照れ臭そうにステージに立った。
「脱原発の東京を作ることは、脱原発の日本を、脱原発の世界を作ること。
原発のない東京・日本は、環境にやさしい東京・日本となる…(中略)…石原都政は大規模開発をしたが、貧困と格差を拡大した都政だった…(中略)…
平和な日本を作っていきましょう」――宇都宮氏は石原都政からの脱却を鮮明に打ち出した。
自・公や民主の候補は新聞・テレビが賑々しく取り上げるだろうが、宇都宮陣営は市民メディアのSNSを駆使する。労組、業界、宗教団体ではなく市井の人々による勝手連が運動を展開しそうだ。
「メディア勝手連」で映像を担当する土屋トカチさんは「原発事故の時も真実を伝えたのはインターネットだった。今度の都知事選もそうなる」と意気込む。
原発と貧困。日本の庶民にとって逃れたくても逃れることができない最大のテーマに正面から取り組む宇都宮立候補予定者の戦いから目が離せない。
《文・田中龍作》