14日、リトアニアで原発建設の是非を問う国民投票が行われ、反対が多数の結果となった。日本時間15日午前7時現在で「反対60%」「賛成30%」のダブルスコアだ。開票率は30%。投票率が国民投票の成立に必要な50%を満たすか微妙な情勢だ。
国民投票と同時に行われた国会議員選挙の結果が、今後の原発政策に影響を与えそうだ。原発推進政策を中心になって進めてきた政権与党の「祖国同盟・キリスト教民主党」が第一党から転落したのである。
原発反対運動の中心になってきた「緑の党」代表秘書のシピュートさんは、次のように話す―
「議会が原発建設にノーということを期待する。もし国民投票の結果を議会が無視するようだったら大統領に意見表明をしてもらう。さらに大統領がそれを無視するようであれば、私たちは抗議行動を起こす」。
原発は「日立GE製」。チェルノブイリ事故と並ぶ「レベル7」の福島事故を起こした日本からの原発輸出に対しても批判が起きそうだ。
原発推進のCMやテレビ番組はやたらとあるが、原発反対はない。マスコミが原子力産業のプロパガンダを務めるところは日本と同じだ。そんな環境のなかで行われた国民投票で「原発にノー」の結果を出したのである。
旧市街地のホテルで政権与党の「祖国同盟・キリスト教民主党」が開いた選挙総括には、党首のアンドリウス・クビリウス首相も出席した。
首相の座を失うことがほぼ確実なクビリウス氏は顔面蒼白だ。ホテルロビーでのぶら下がり記者会見には筆者も参加した。記者クラブが支配する日本と違ってフリーのそれも外国人記者も参加できるのだ。
敗北の原因を記者団から聞かれた首相は「経済危機から脱出できなかったこと」と答えた。今度の総選挙で壊滅的な敗北を喫するであろう民主党の野田佳彦代表(首相)も、経済政策をあげて誤魔化すことだろう。
リトアニアはエネルギーの80%をロシアに依存する。原発はリトアニアを長く苦しめてきたロシアの軛から脱出する「装置」でもあった。原発賛成派の市民や政治家は誰もが「ロシアからのエネルギーの自立」と答えた。
リトアニアは北海道の80%ほどの国土面積しかなく農業が主産業の国家だ。ここにもし原発事故が起きれば、国は壊滅状態になる。
ロシアも怖いが原発事故はもっと怖い。国民投票で有権者が出した答えだった。
《文・田中龍作 / 諏訪都》
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リトアニア取材は関西の篤志家S様の多大なご支援の御蔭を持ちまして実現致しました。諏訪記者は自費で来ております。