
爆撃でビルが1棟丸ごと消えていた。ここを撮影中、ヒズボラに見咎められ拘束された。=20日、レバノン南部スール 撮影:田中龍作=
「イスラエル軍の猛攻に遭い、ガザのように粉みじんに破壊され住民がエスニッククレンジングに遭っている」と聞き、惨状を伝えようと田中はレバノン南部に踏み込んだ。20日正午前だ。
何事もなければ人出で賑わう観光地スールは、ゴーストタウンのようにひっそりとしていた。
平和の象徴であるマクドナルドは店を閉じている。爆撃で破壊された家屋を撮影していると、バイクに乗った二人組がやってきた。ハンドルを握っていた男が眉を吊り上げて「カメラを出せ」と怒鳴り、カメラをもぎ取ろうとした。
田中は愛機を渡すまいと死に物狂いで抱え込んだ。すると男は拳銃を田中の顔の前に付き出してきた。
こうして田中は拘束された。2時間くらい車に閉じ込められただろうか。その後、レバノン政府軍に突き出された。

平和の象徴であるマクドナルドの閉店が現状を如実に物語っている。=20日、レバノン南部スール 撮影:田中龍作=
ここからが長かった。軍の兵営で2時間ほど尋問に遭った。基地に移送され、血圧測定などを受け、医師に問診された。逮捕投獄に耐えうる健康状態であるかをチェックしたのだろう。
健康診断が終わると、ここでも尋問に遭った。
携帯電話の通信履歴・チャット履歴を徹底的に調べられた。係官は一件一件「この会話は何だ?」「この名前は?」と聞いてきた。
そんな昔の会話は忘れた。そんな人、いたかなあ?という所まで遡(さかのぼ)って尋ねてきた。2時間はたっぷりあったように覚えている。

イスラエル軍は、戦略要衝のリタニ川に架かる橋を落として、ヒズボラと住民を袋のネズミにするつもりだ。=20日、レバノン南部 撮影:田中龍作=
尋問が長くなったのは、ユダヤ人ドライバーの名前があったため、不審に思われたからだ。田中は理由を説明した。
パレスチナに行くには西岸であれ、ガザであれまずイスラエルの地を踏まねばならない。そのためイスラエルのタクシーに乗ることがある。
ユダヤ人の名前がスマホの電話帳にあったのは、このためだ。
2時間くらい尋問すると係官は、田中のスマホを持ってひとりで別の部屋に移って行った。通話履歴・チャット履歴をさらに詳しくチェックするのだろう。これまた、どっぷり2時間余り要した。
田中は窓のない狭い部屋で待たされた。鉄の扉が重い音を残して閉じられた時は観念した。最悪の場合を想定した。
何年も投獄されたら、もう取材に行けないだろう。でもその方が借金をこしらえなくて済む。せめてもの女房だ。そう思うと不思議と気が楽になった。
解放されたのは午後8時半頃だっただろうか。長い一日だった。
~終わり~
◇
【読者の皆様】
レバノンをパレスチナ化しようとしているイスラエル軍の悪逆非道を何としてでも伝えなければならない―
田中はレバノン南部でヒズボラに拘束され、軍に突き出されましたが、怯みません。
資金が続く限り、イスラエルが仕掛けた戦争の現実を読者の皆様にお伝えします。





