麻生首相は21日、衆院を解散する。選挙の顔として福田前首相に後を託されて301日目、あまりにも遅い決断だった。
解散する(しなければならない)機会は幾度もあった。だが300余議席を失いたくない最大派閥領袖らの思惑と、麻生氏自らが最高権力者の座を手放したくないなどの理由で、解散は次から次へと先延ばしにされた。
麻生首相は昨秋、出身母体である青年会議所で「1日でも長く総理をしていたい」と本音をもらしたと言う。自民党にパイプを持つ民主党関係者は幾度も「満期まで行くかもしれない」と渋い顔を見せた。
与党政治家の喧伝とは裏腹に景気は一向に回復しない。有効求人倍率も史上最悪を記録した。にもかかわらず、官僚の無駄使いにメスは入れられず、首相は批判をものともせずにホテルのバー通いを続ける。医療や年金などの社会保障政策はボロボロにほころび、多くの国民が悲鳴をあげているのにもかかわらず、だ。
庶民感情を逆なでした結果、自民党は東京都議選で歴史的敗北を喫した。首相の責任を問う党内世論が高まり「麻生降ろし」が現実味を帯びた。すると首相は解散・総選挙の日程を予告するという奇策に出た。国民どころか、自民党のことも眼中にはない。あるのは自らの保身と意地だけだ。
首相問責が参院で可決された14日、筆者は有楽町で街の声を聞いた。インタビューに答えてくれた人は全員「政権交代した方がいい」との考えを示した。うち3分の2は「ずっと自民党に入れてきたが、今度は入れない」ときっぱり。
有権者はこれまで「自分一人くらい選挙に行かなくても誰かが何とかしてくれるだろう」という「おまかせ民主主義」に浸りきっていた。だが、今度の選挙はどの社の世論調査を見ても「投票に行く」と答えた人が、過去の平均と比べて10ポイント余りも上回っている。私たちの一票がよどんだ政界に新風を吹き込むのである。
解散と同時に政界は事実上の選挙戦に突入する。選挙後は政界再編成が起きる可能性もある。立候補予定者の識見や行動力をしっかり見極めたい。衆院総選挙は8月18日公示、30日投開票の予定。
自民党の終焉、民主党が政権を取る日
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