「99%の声を聞け」 貧困撲滅訴え世界同時アクション ~上~

格差撲滅へのメッセージを綴ったプラカードを手に気勢をあげる参加者たち。(15日、六本木・三河台公園。写真:筆者撮影)

格差撲滅へのメッセージを綴ったプラカードを手に気勢をあげる参加者たち。(15日、六本木・三河台公園。写真:筆者撮影)

 不合理な貧富の差に抗議してウォール街を占拠する運動が、とうとう世界に飛び火した。15日、世界82か国、951都市で一斉に同趣旨のデモ・集会が催された。東京会場の新宿、六本木、日比谷を取材した。

 六本木・三河台公園。ほんの一握りの大金持ちが住む六本木ヒルズのお膝元に貧者たちが集合した。『We are the 99%』『銀行は詐欺をやめろ』…参加者たちは、ウォール街でもおなじみになったプラカードを持ち寄った。

 『東京占拠』のプラカードを持つ漫画家の男性(40代)は、食うや食わずの日々が続く。「編集プロダクションがコストを切り詰めるため、原稿料のダンピングが起きている。利益が出ているのは、スポンサーと広告代理店と元請だけ。まさに1%の富裕層が儲かり、残る99%には利益が分配されない」と業界の構造を説明する。話し終わると「生活できるだけのカネをくれ」と悲壮な叫び声をあげた。

 厚労省の調べによると貧困ライン以下(年収112万円以下)の世帯は年々増え、直近(2009年)の調査では16%にも上る。

 主催者(ウォール街を占拠せよ、世界同時アクションin東京アクション・実行委員会)の一人で作家の雨宮処凛さんは、次のように話す――

 「ウォール街での要求を見たらまったく日本と同じ。政権交代以降、貧困や派遣労働の問題は過ぎ去ったもののようにメディアが扱っている。だが状況はあの頃(政権交代前)より悪くなっている。『アラブの春』などと世界的につながりたい」。

アラブの春で重要な役割を果たし、ウォール街でも活躍するネット集団「アノニマス」のマスクを被った参加者。(内幸町~日比谷公園からのデモ。写真:筆者撮影)

アラブの春で重要な役割を果たし、ウォール街でも活躍するネット集団「アノニマス」のマスクを被った参加者。(内幸町~日比谷公園からのデモ。写真:筆者撮影)

 つい20~30年前までは父ちゃんが額に汗すれば一家を食べさせ、子供を学校にやれた。ところが今はどうだろう。骨をきしませて働いても、自分ひとり食っていけない人が山ほどいる。天と地との格差が生まれる構図は次のようになる――

 グローバリゼーションで工場が海外に移転し、働き口そのものが減る→日本に残った企業は国際競争力に打ち勝つために労働コストを徹底的に切り詰める→いつでも首を切れる派遣や非正規社員が増える→貧困層が増える。

 グローバリゼーションの恩恵に浴しているのが、ほんの一握りの富裕層であり、上前をはねているのが金融資本なのである。

集会に参加した自営業の男性(都内・40代)は語る。「貧困層が一部の金持ちを支える。資本主義の矛盾が今、限界に来ている。生きていて楽しいと思う若者が、どれだけいるだろうか」。

(つづく)

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