先月30日投票が行われた衆院選挙のある選挙区で「選挙に不正があったのでは」と一部の有権者が追及の構えを見せている。
この選挙区の首長は地元選出の自民党有力議員の木偶人形というのが定説だ。独裁者で鳴る知事の傀儡とも言われている。この有力議員は知事の息子でもある。
選挙は自民と社民系候補の一騎打ちとなり、接戦が伝えられていた。一部の有権者が疑惑を抱く根拠は、メディアの出口調査では、自民候補がわずか0・6~1ポイントのリードであったにもかかわらず、3万票もの大差で勝利する開票結果となったからである。
このケースで不正操作が行われるとすれば期日前投票が考えられる。投票日当日の投票箱は投票が終わるとただちに開票所に持ち込まれる。開票は公開の場(公立体育館がよくあてられる)で行われるので、この間の不正は考えにくい。有権者を大量に買収していたとしたら出口調査で「自民候補がわずか0・6~1ポイントのリード」とはならない。
期日前投票は公示日の翌日から投票日前日まで行われる。今回の衆院選挙では8月19日から29日までの11日間、実施された。毎日、午後8時に投票が終わると投票箱は選挙管理委員会(選管)に保管される。選管は役所の組織であり、普通役所の建物の中に置かれる。投票箱は毎日投票が終わるとフタが締められ鍵がかけられる。この鍵も選管に保管される。
想定され得る不正の手口―ー
投票箱と鍵の保管場所を知る人物が選管に忍び込む→自分が当選させたい候補者の名前を記入した投票用紙とライバル候補の名前が記入された投票用紙を同じ枚数だけ差し替える。
投票した有権者を選管がチェックし、民間の「選挙立会人」がそれを監視しているからだ。投票箱の中の投票用紙の数はあくまで工作前と同じでなければならない。投票用紙は各選挙区で見込まれる投票率よりはるかに多めに用意しているので、それを工作に使う。ちなみに7月の東京都議会議員選挙で都選管は有権者の9割にあたる約900万枚を用意した。投票率は54%だったので約360万枚が余った。
20年余りも前、和歌山県に月光仮面を名乗る男性がいた。月光仮面は選挙の度にそのもののコスチュームで開票所に現れ、投票用紙をチェックするのだ。彼は選管によるカウントに不正がある、と主張していた。公開の場で行われているし、民間の選挙立会い人も監視しているので一般には考えにくい。
だが上記(期日前投票の投票箱の中身を差し替える)の方法による不正工作では、民間の選挙立会人の目は届かない。同一の筆跡とならないように多くのスタッフで左手で書いたり、わざと崩して書いたりすれば、形跡らしきものは残らない。
念のために手袋をして工作すれば指紋は残らない。選挙違反事件なのに警察の捜査一課の鑑識班が出動することもあるが、そうなっても指紋は検出されずに済む。
選挙の勝ち負けが死活に関わる人達がいる。土建業者などがそうだ。生活のために彼らはどんな危ない橋でも渡る。今は影を潜めた現金買収の「打ち込み屋」のほとんどが建設関係の人間だったように。件の自民候補も土建業者が選挙を支えている。
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