東京桜田門の警視庁がこんな姿になることを果たして想像できるだろうか?
香港島中心部にある香港警察總部(=本部)。3m近い高さのバリケードで周囲を固め、制服警察官たちが絶えず巡回する。バリケードの傍にも張り付いている。
警察總部庁舎を見下ろす空中回廊にも制服警察官たちが立つ。もちろん庁舎の高層階からも監視が続く。
360度、どこを見回しても警察の目が光っているのだ。アリが這い出る隙間もないとはこのことだ。
隠し撮りなんてできない。あきらめた田中は正攻法で行くことにした。歩哨に立っている警察官に大きなジェスチャーで「フォト、OK?」と撮影許可を求めた。
意外にも警察官たちは親指を突き立てて「アウトサイド(外側からだったらOK)」と言い撮影を許可したのである。
明らかに彼らはホンコーナーの警察官だった。両肩に縫い付けられている5ケタのIDナンバーが何よりの証だ。
警察總部の守りが要塞のように固くなっているのには事情がある。
總部庁舎は去る6月21日、1万人を超すデモ隊によって包囲されたのである。打って出ればデモ隊から袋叩きに遭うだろう。
習近平国家主席がG20に出席する直前でもあったため催涙弾で追い払うこともできない。
警察官たちは雪隠詰めとなった。治安はマヒ状態となったのである。理屈だけで言えば無政府状態だ。
習主席が出席するような国際的な催しがない今、デモ隊が再び押し掛ければ、催涙弾が雨あられのごとく撃ち込まれるだろう。
だが、デモ隊は玉砕戦法は採らない。彼らが採るのはゲリラ戦術だ。どこからでも遊撃できる。
力で抑え込めば、逆に治安は悪化する。
~終わり~