日本の大手メディアの劣化を世界にさらす“事件”が起きた。
今月3日、財務省の記者会見で中国人記者が、麻生大臣から嘲弄された。東京新聞や雑誌アエラなど一部のメディアが報じている。
筆者は麻生大臣のアホさ加減を今さら問うつもりはない。問題なのは日本の大メディアの記者たちが、大臣に追従して中国人記者を嘲ったことである。
“事件” のいきさつはこうだ―
香港フェニックスTVのリ・ミャオ東京支局長が挙手して質問した。慶応大学大学院卒業の李さんは母国語と変わらぬほど日本語が流暢だ。やりとりを再現する。
李:「香港フェニックスTVの李と申します」
麻生:「What?」
李:「香港フェニックスTV特派員の李です」
麻生:「香港、何? 香港、What?」
李:「フェニックスTV」
麻生:「フェニックスTV、おお」
李:「はい、特派員の李と申します。AIIBのことについてお尋ねしたいと思います」
麻生:「ハハハハ」
複数の記者が麻生大臣と一緒に笑う。
やっと質問に入れた李さんは、日本政府がAIIBに加盟しないことについて「野党は外交の敗北だとコメントしているが、大臣はどのように見ているか?」と問うた。
麻生大臣が答える。「おたく(中国)と違って、うち(日本)は野党が何でも言うんですよ」。
複数の記者が再び笑う。
麻生大臣が畳みかける。「うちは共産党じゃありませんからね。中国と違って何でも言える国ですからいい国なんです・・・(後略)」。
麻生大臣も質が悪いが、日本の大手メディアの記者もレベルが低い。財務省の記者クラブを担当するのは経済部の選りすぐりだ。エリートにしてこの有様である。「日本の言論事情は北朝鮮以下」と揶揄されることもある。「中国と違って何でも言えるいい国」と胸を張って言える言論事情でないことは、自民党のテレ朝聴取ですでに明らかではないか。
李さんは「日本での記者生活は8年にもなるが、国籍をめぐって笑われたのは初めて」と憤った。政治家から嘲弄されるのも、記者団から笑われるのも初めてという。
香港フェニックスTVは、世界各国に住む華人を中心に2億5千万人もの視聴者を持つ。李さんは自らのブログで“事件”を綴っている。麻生大臣も記者クラブも物笑いの種だ。
「ジャーナリストは政治家と対峙すべきなのに、一緒になっている。日本は特殊だ」。「記者クラブの閉鎖性は海外でも悪評を買っている」。李さんは日本のマスコミ事情に呆れる。
「海外広報戦略というのなら、外国人記者が取材しやすいような環境を整えるべき」と日本政府にも注文を付けた。
権力のお先棒を担いで、お身内以外は見下す。世界標準を知らない日本の記者たちは、海外から見下されていることに気づいていない。
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