「不敬か、表現の自由か」をめぐる問題は、サザンオールスターズの桑田氏側が謝罪する格好になった―
昨年末、横浜アリーナで行われたサザンオールスターズのステージで、リーダーの桑田佳祐氏が紫綬褒章をオークションにかける真似をしたことなどが、ごく一部の人々から不敬だと批判されていた。
日章旗を掲げるグループは11日、サザンオールスターズが所属する事務所アミューズ(渋谷区)の前で、桑田氏の謝罪を求める街宣活動を繰り広げた。
街宣活動のあと、彼らはステージでの演出の真意などについての説明を求める公開質問状をアミューズあてに出した。回答の期限は5日以内だった。
期限切れ目前の15日夕、アミューズと桑田佳祐氏は連名で事務所のHP上に謝罪文を掲載した。
謝罪文の“充実”ぶりには驚くばかりだ。日章旗を掲げたグループが問題にしていない所にまで踏み込んでいるのだ。
グループは桑田氏がつけた「チョビヒゲ」や「ステージ上で上映されたデモなどのニュース映像」については触れていない。グループがこだわったのは「国体」と「不敬」なのだ。
だが桑田氏側はわざわざ「チョビヒゲに他意はない」「ニュース映像は緊張が高まる世界の現状を憂い」などと説明しているのだ。
桑田氏の演出意図はともかく「チョビヒゲ」がヒトラーと安倍首相をかけたものと“解釈”できる。
ステージで上映された中韓の反日デモは、安倍政権のタカ派的姿勢に反発するものだ。
ゆえにだろうか。桑田氏側の謝罪文は、安倍政権に配慮し過ぎた内容なのである。
~右翼や政治家からの圧力なし~
安倍政権の好戦的な姿勢を揶揄したとの指摘がある「ピースとハイライト」の歌詞についても、アミューズの広報担当者によれば、批判的な意見が電話で何件か寄せられたという。
普通の人々が「ピースとハイライト」の歌詞について、わざわざ事務所まで抗議の電話を入れたりするだろうか? ネトウヨであることは容易に察しがつく。
前出の広報担当者によれば、右翼や政治家からの圧力はなかったという。だとすれば桑田氏と事務所は、安倍政権の意向とグループの抗議を忖度し過ぎたことになる。
桑田氏ほどの大物が、取るに足りぬ揚げ足取りに屈したことの影響は小さくない。他のアーチストの表現の自由が、この先奪われないことを祈るばかりだ。