
グレタさんらを乗せた支援船団が目指していたガザの港。=撮影:田中龍作=
支援物資を積んでガザに向かっていた船団が、きょう未明(日本時間)、地中海の公海上でイスラエル軍によって拿捕された。
クルーザーなど40~45隻からなる船団には約500人が乗り込んでいた。うち数隻と環境活動家のグレタ・トゥンベリさんら(人数は不明)はイスラエルに連行された。死傷者は出ていないようだ。(※)
夏真っ盛りの8月、田中は船団に乗り込みたく思い、主催団体のglobalsumudflotilla.org に申し込んだ。「パスポートの写しを送れ」と言われたので送ったが、返事はなかった。選に洩れたのだ。
洩れて胸を撫で下ろしもした。というのは―
ガザ沖はイスラエルの領海となっている。イスラエルが援助船団を通過させてくれる訳がない。拿捕されるのは必定だ。拿捕が怖いと言っているのではない。

田中はパレスチナ人通訳と共に水平線から支援船団が表れるのを夢見ていた。=ガザ港 撮影:田中龍作=
拿捕されればパスポートの写しを撮られ、イスラエル当局に記録が残る。イスラエル軍は目に止まった者に対してパスポートの提示を求め、その場で写しを撮る。
ガザ境界で西岸で、田中はイスラエル軍に、幾度もパスポートの写しを撮られている。
支援船団に参加してイスラエル軍に拿捕されれば、イスラエル軍にパスポートの写しを撮られるのは火を見るより明らかだ。
イスラエル当局に記録が残れば、パレスチナ取材のため空路で入ってもベングリオン空港のパスポートコントロールで引っ掛かり、入国できない。
ヨルダンから陸路で入ろうとしても国境管理はイスラエル軍であるため同じように入国拒否される。
パレスチナ独特の泥臭い土の匂いとねっとりとしたオリーブの香りは嗅げなくなるのだ。
パレスチナの大地に立ち、虐殺を見届けるのが田中龍作の仕事だと思っている。入口で追い返されたのでは死んでも死にきれない。

停戦の合間、漁に出たガザの漁師たち。この海はもう帰ってこないのだろうか。=ガザ港 撮影:田中龍作=
※
2010年にはトルコのNGOによる支援船が出てガザに向かっていたが、イスラエル軍の特殊部隊に乗り込まれ、10名が射殺されている。
この時、田中はガザにいて地元通訳と共に支援船の到着を心待ちにしていたのだが。
今回、死傷者が出なかったのは不幸中の幸いである。
~終わり~
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田中龍作ジャーナルは現場主義であるため、取材には多額の交通費がかかります。