「ん、これは爆撃すると厄介なことになるかな?」…イスラエル軍は躊躇した時、ドローンの高度を思い切り下げる。ヒット可なのか、不可なのかを確認するためだ。
耳に飛び込んでくるドローンのエンジン音は、耳の傍で草刈り機がワンワン唸っているようにけたたましい。「俺をチェックしに来てるんだな」と緊張する。
田中は臆病者なので、ドローン攻撃されないように、パレスチナに入境する時は携帯電話番号をイスラエル軍に伝える。外出する時は黄色いプレスゼッケンを着用する。
ドローンが高度を下げチェックすれば、下にいるのは日本人ジャーナリストの田中龍作であると認知してくれるからだ。
食料支援のNGOワールド・セントラル・キッチン(WCK)の欧米人スタッフがイスラエル軍の対人ミサイルで殺害された件―
イスラエルは今になって誤爆だと言い始めたが、悲劇は起こるべくして起きた。
WCKはじめ多くのNGOはエジプト側(ラファ)からガザに入っているようだ。
イスラエル側(エレズとケレームシャローム)から入った場合、イスラエル軍の監視下に置かれるため、欧米人や日本人がヒットされる可能性は低い。
昨年10月7日のガザ侵攻からこれまでにNGOのエイドワーカー160人が死亡している(BBCによる)。
前回(2014年)の戦争まではNGOのガザ入域をイスラエル側からのみに限っていたため、欧米人に死者が出たなんて聞くことはなかった。(アラブ人だったら構わないと言っている訳では決してない)
エジプト側から入ってもイスラエル軍のホームページを通じて「米国に本部を置くWCKという組織の名称」「ロゴの写真」を送っておくべきだった。
エジプト側で仕入れたSIMカードの場合、かりにイスラエル軍に携帯番号を伝えたとしても識別してくれない可能性があるからだ。
イスラエルは窮余の一策として現在閉ざしているガザ最北端のエレズからもNGOの入域を認める。
それでもエジプト側からNGOが大挙して入り続けることは避けられない。
“誤爆”という名の殺害はこれからも起きる。
~終わり~
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