西岸の最激戦地ジェニン。芝刈機のような音を立てて低空飛行するドローンは、午前中までにハマスの戦闘員5人を対人ミサイルで殺害していた。田中はドローンに発見されないよう建物の軒先に入り辺りを窺った。
「パーン、パーン、パーン」。銃撃戦特有の乾いた音があちこちから響く。イスラエル軍の車両約10台が坂を上り下りした。武装勢力狩りを展開しているのだ。息を潜めて家屋の中にいる住民は生きた心地がしないだろう。
イスラエル軍は12日午後7時(現地時間)までに13歳の少年を含む8人を殺害、武装勢力とみなした住民70人を逮捕した。
難民キャンプに隣接する公立病院をめぐる攻防は、あらゆる人々にとって危険このうえないものだった・・・救急隊員、負傷者、ジャーナリスト、そしてイスラエル軍にとっても。
イスラエル軍は救急車が病院に入るのを阻んだ。ジェニンに侵攻してくるたびに公立病院を包囲する。
そのイスラエル軍車両は、田中の目の前で武装勢力の攻撃を受け立ち往生した。
公立病院は昨年5月、難民キャンプ入口でイスラエル軍に射殺されたアルジャジーラの女性記者シリン・アブアクレさんが、搬送された病院でもある。
イスラエル軍は病院近くで取材する報道陣に3度までも手榴弾のような物を車両から発射してきた。近くにいた少年が破片を受けて負傷。顔面が血まみれになった。
イスラエル軍はガザ同様、大規模病院に執着する。ジャーナリストを武力で追い払ってまでも病院を包囲したい理由はどこにあるのだろうか。
イスラエル軍が最も神経を尖らすジェニンは、ファタハとハマス(兄弟分のイスラム聖戦も含む)が同居する。市街戦は自ずと苛烈になる。
今年に入ってこれまでに124人がイスラエル軍によって殺害されている。
~終わり~
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【読者の皆様】
ドライバーへは危険手当も含めて1日600ドル(約9万円)も払わなければなりません。
ホテル代も入れると1日平均10万円を超えるコストになります。毎日取材に出るわけではありませんが、1ヵ月に換算すると途方もない金額になります。
イスラエル軍の銃口よりも借金に怯えながらの取材行です。
ジャーナリストがこの世の生き地獄を伝えなければ、民族浄化と虐殺は歴史上なかったことになります。