ハマスがいるからイスラエルとの戦争になって無辜のパレスチナ市民が巻き添えを食らって死ぬ…とする言説が目につく。
だがヨルダン川西岸(ウエストバンク=通称・西岸)の現状を見ると、その言説は的確でないことが分かる。
西岸を支配しているのはハマスではない。ハマスとライバル関係にあるファタハだ。西岸では毎日誰かが虫けらのようにイスラエル軍に殺される。
ナブルスでは難民キャンプに侵攻してきたイスラエル軍が出会い頭に少年を撃ち殺した。今年1月のことだ。田中は病院の遺体安置室で遺体を確認した。イスラエル軍は見事に少年の額を撃ち抜いていた。
入植者が高台からライフルで狙いを定めて撃ってくる。弾はパレスチナ住民に命中する。現地でよく耳にする事件だ。
映画『シンドラーのリスト』でユダヤ人収容所の所長がベランダからユダヤ人を射殺するシーンがある。これと同じことが西岸で当たり前のように起きているのだ。
土地の収奪はイスラエル軍の日常業務である。軍はある日突然やってきて「72時間以内にこの家屋を壊せ」と命じるという。
命令に従わなければイスラエル軍から破壊される。そのうえ作業代として4万1,500ドルを請求される。
こうしてイスラエルはパレスチナ側の土地を着々と奪ってゆく。
エルサレムと境を接するカランディア村のアワッド・アッラー村議会議長によれば、2006年以前に348万2千㎡あった村の面積は、現在80万㎡となった(2018年の取材時)。4分の1にまで減ったのである。逆に言えば4分の3をイスラエルに奪われたのだ。
ハマスとは関係のないところでパレスチナ住民は命と土地を奪われてゆく。戦争は命と土地を守ろうとする、すべてのパレスチナ人の抵抗なのである。
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田中は人類史に残る大虐殺が起きる恐れのあるガザを取材するためにパレスチナに来ております。
危険手当を伴うためにドライバーに日額1千ドル(約14万円)も払わなければなりません。
飛行機代、ホテル代ですでに借金まみれとなっており、そこに巨額の取材費がのしかかります。
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