樹木の伐採が年明けにズレ込んだというだけで、神宮外苑の再開発工事は着々と進む。重機は唸りをあげ100年の森を切り刻んでいた。
「ガーン・ガラガラガラ・・・」。計画通り進めば秩父宮ラグビー場が移転して来る神宮第2球場周辺は特に騒音が凄まじい。
田中は歩道から球場にレンズを向けて写真を撮影していた。歩道は公道である。解体されている様子は高いフェンスに遮られていて全く見えない。
田中は尾行されていることに気づいた。写真まで撮られている。建設会社の人間だった。無線でどこかと連絡を取っている。
田中はすぐに駆け寄って「私の写真を撮りましたね」と詰問した。男は「いいえ風景を撮っていただけです」とトボけた。
田中は「私も風景を撮ります」と切り返し男の顔を撮影した。男は自分のスマホを田中に見せた。しっかり田中が写っている。
「写真を消しましょうか?」と男が迫ってきたが、田中は「いいえ消さなくて結構です。(その代わり)私はあなたの写真を残しますから」と言って断った。
伐採反対の世論を受け開発業者側がピリピリしていることだけは確かなようだ。
東京都議会の議員さんたちが重い腰をやっとあげた。「神宮外苑再開発をとめ、自然と歴史・文化を守る議連」をきょう5日、発足させたのである。
共産党、立憲民主党、生活者ネットワーク、ミライ会議、グリーンな東京、自由を守る会の6会派40人から成る。遅きに失した感は否めないが、情報公開などで東京都を追及していく構えだ。
議連のお披露目が行われた後、「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」の加藤なぎさ代表らが、議連に要請書を手渡した。
「まちづくりに対して子どもの意見を取り入れるよう都議会にて政策実現いただきますよう要請いたします」という内容だ。
子どもの世代まで外苑の森をしっかり残して下さいよ・・・母親たちの静かだが譲ることのできない訴えである。
~終わり~
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