地元議員や首長らに多額の現金をばら撒いた河井案里元参院議員はすでに有罪が確定している。にもかかわらず公判でカネを受け取ったことを認めた地元議員らはお咎めなし。
公正な選挙をやり直すために行われるはずの再選挙がまた不正選挙となってしまう。
参院広島選挙区の再選挙は来月8日告示、25日投開票と目前に迫る。元検事として並々ならぬ危機感を抱く郷原信郎弁護士が第2の故郷広島にきょう4日、単騎乗り込み、記者会見を開いた。
郷原弁護士をめぐっては立憲民主党からの出馬が取り沙汰されているだけに、地元マスコミの記者やカメラマンが会場の弁護士会館に詰めかけた。
記者からの質問は「出馬するのか」「しないのか」に集中したが、郷原氏は「ここはその場ではない」として回答を避けた。
何の総括もないまま公認候補を立てる自民党。それを追及しないマスコミ。郷原氏は「県民が一番知りたがっている問題ではないか。私は信じられませんでした」とまで言った。
選挙違反がどれほど社会を破壊するものなのか。郷原氏は記者たちに自らの原体験を語った。札束が飛び交い「戦争」とまで言われた奄美大島の選挙違反事件(1980年代)だ。
奄美大島を管轄する鹿児島地検名瀬支部に赴任した若き日の郷原検事は、あらゆる選挙違反を捜査、検挙した。
選挙違反のデパートだった。奄美大島の選挙には機動隊が出た。マサカリを持って相手陣営に殴り込みをかけるチンピラもいた。
公共工事でピンハネした上前が選挙の買収資金として還流していた。
社会は荒れる。経済は自立しない。船がいない(不要な)港ができるだけ。自然が破壊されるだけ。
記者ではないが、会見場には「河井疑惑をただす会」の山根岩男事務局長の姿もあった。「ただす会」は、被買収(カネをもらった側)の議員らを公選法違反で広島地検に刑事告発している。
山根事務局長は「被買収で検察を動かすにはどうすればよいのか?」と質問した。
郷原弁護士は「(カネを渡した側の)有罪が確定しているのだから、検察は受理しなければならない」とアドバイスした。
記者会見後、山根事務局長は「心強かった」と語った。郷原弁護士の登場が検察の尻を叩くことになり、世論を盛り上げることになれば、自民優勢が伝えられる選挙情勢は変わるかもしれない。
郷原氏は広島に乗り込むにあたって自民党県連会長の宮沢洋一参院議員に質問状を送りつけた。内容は—
今回の再選挙にあたって被買収の事実が明らかになっている者には、(自民党が擁立した)西田氏の選挙運動に関わらせないようにするために、具体的にどのような措置を取るのか。それを明らかにするように求める。回答期限は3月8日。
自民党広島県連がまともな回答をするとは思えない。そうなると郷原氏に第2のアクションを起こすきっかけを与えることになる。
まだまだ一波乱起きそうだ。
~終わり~
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