間接民主制を危うくするような事態が地方で起きている ―
参院の高知選挙区と徳島選挙区は、最高裁の違憲判決を受けて、今回から「合区」となった。
高知・徳島の合区は与野党候補とも徳島出身だ。高知の有権者は、選挙が始まるまで顔も名前を知らなかった候補を選ばなければならないのである。
高知市の名所・ひのめ市場そばの選挙掲示板。通りがかる有権者は候補者のポスターを見向きもしない。
買い物帰りの主婦(50代)は「高知の人(候補者)がいない」と戸惑いを隠せない。
「高知県のことがわからない人が出る。一県にせめて一人、議員を。納得がいかんですよ。どっかの選挙、よその選挙。誰に入れたら良いのだろうか?」。主婦は不満を吐き出すように話した。
会社員の男性(40代)も同様だった。「(徳島の有権者と)一緒にやるのは難しい。正直言って、関心は薄れる。(投票基準は)人ではなくなる。どこの党なのか。党で選ぶことになる」。
与党候補の中西祐介候補(現職・36歳)と野党統一候補の大西聡候補(弁護士・53歳)がきょう、時を違えて高知市内の同じ場所で激突した。日曜日の買い物客で賑わう大型ショッピングセンターの前だ。
先陣は与党陣営だった。中西候補は公示から5日目のきょう、初めて高知に入った。聴衆はほとんどいない。
河野太郎防災担当相・国家公安委員会委員長が応援に入っているとあって、SPの方が断然多かった。
「高知の良さを感じます。高知に恩返ししたい」・・・中西候補の若く張りのある声が空虚に響いた。
両候補とも選挙公約に「合区の解消」を掲げる。
大西候補は徳島出身だが、公示日(22日)の第一声は高知駅前であげた。
大西候補の高知での動きが機敏だったのは、市民グループ(ママの会、女性の会、高知憲法アクション)の力が大きい。
市民グループは県外者である大西候補の知名度を上げるために早くから行動してきた。10万枚規模でのビラ配布、電話作戦、幹線道路や繁華街でのスタンディングなどに汗を流してきた。
野党の大西候補の演説は与党候補から1時間後に始まった。会場は大西候補の浸透を図ってきた市民グループで活気づいた。
「結局国民置いてきぼりで、戦争法が強行採決された・・・(安倍政権が)許せないから(野党陣営を)手伝っている」。プラカードを持つ女性は涙ながらに語った。
合区により地方がますます置いてきぼりにされようとしている。安倍内閣が掲げる「地方創生」は、得意の大ウソである。
~終わり~
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