公開の場で権力を追及できる唯一で最後の砦、日本外国特派員協会(FCCJ)。自らが関わる政策や輝かしい経歴を ひけらかそう と思ってFCCJの記者会見にやって来る権力者は、たいがい痛い目に遭う。
FCCJが「報道の自由推進賞」を設けることになった。同賞は開かれた社会と民主主義の担保に寄与する優れたジャーナリストらに贈られる。
審査員6人のうち清武英利氏(元讀賣新聞編集委員)と田中稔氏(社会新報記者)が、きょう、FCCJで記者会見し、日本のジャーナリズムの危機を訴えた。
2人に共通するのは調査報道を信条としていることだ。お役所発表たれ流しのマスコミ報道とは対極にある。
もうひとつ2人に共通しているのはSLAPP(恫喝訴訟)の経験者であることだ。清武氏はメディア王に、田中氏は原発フィクサーに名誉棄損で訴えられ多額の賠償金を請求された。
だが、権力の実態を明るみに出した社会的意義は大きかった。
清武氏は「報道に対する官庁や大企業の壁はますます厚くなっている。現場を歩く記者の姿が減ってきた」と指摘する。
権力側は強大になっている一方で、それを追及するはずの記者は調査報道を怠っているというのだ。確かに新聞紙面やテレビ画面を賑わしているのは、政府や大企業にとって都合のよいニュースばかりだ。
清武氏はウォッチドッグであることを忘れた日本のマスコミに苦言を呈した―
「(記者は)サムライ、というか、志だと思う。でなければエスタブリッシュメントに居るということを認めないと…」「メディアに携わっている人の立ち位置が変わった。泣いている人の横に立っていたのが、今は権力者の横に立っている」。
清武氏は新たな賞の意義を「空気に対する警鐘、(頑張っている記者への)励ましだと思う」と表現した。
国境なき記者団が発表した報道の自由度で日本は世界180か国中、61位。韓国やクロアチアにも劣る。
会見の司会者は「秘密保護法以後、原発や日米関係などがタブー化し、直接的な圧力が報道機関にかかっている。日本の記者達はMore fearful, more wimpy (ますます恐れをなし、より臆病になっている)」とメディア状況を批判した。
今年あえて「報道の自由推進賞」を創設したのは「まさにその時だから」だ。
FCCJ「報道の自由推進賞」は国連が1993年に定めたワールド・プレス・フリーダム・デイの5月3日に発表される。日本のマスコミは無視してかかるだろう。
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