目の前でイスラエル軍により肉親を殺され、家を破壊されるガザの子供たち。彼らは想像を絶するほどの凄惨な状況に置かれている。
ガザ住民の精神医療のケアをしている‘Mind-Body Medicine’が、子供1万3千人を調べたところ、36%もがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていることがわかった。「ふるえ」「突然叫ぶ」「不眠」など独特の症状を示している。
‘Mind-Body Medicine’ は、UNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)の避難所(※)に逃れてきている子供たちの精神状態を把握するために毎日、絵を描かせている。
テーマを設定せずに自由に描かせているのだが、やはり「戦争」の絵が大半を占める。メルカバ戦車の砲弾が飛び、無人攻撃機がミサイルを落とす・・・
ロケットのような絵を描いていたのは、激戦地のベイト・ラフィーヤから避難している少年(11歳)だ。
「何の絵か?」と聞くと、少年は「ハマスのロケット弾」と答えた。
「大きくなったら、ロケット弾をイスラエルに撃ち込みたいか?」と尋ねると、笑顔で「ナーム(Yes)」と答えるのだった。
「今のところPTSDは発症していないが、数週間後に発症の可能性がある」と精神科医が見ている少年(10歳)に話を聞いた。
一緒に避難していた少年の父親は家財道具を取りにアル・シジャーイヤの自宅に帰ったところを、イスラエルの無人攻撃機に狙い撃ちにされた。
変わり果てた父親とは病院で対面した。父親の体は四分五裂の状態だった。
父は若い頃、ハマスの軍事部門「アルカッサム旅団」の兵士だった。
父と母が戦前に離婚していたため、少年は父と暮らしていた(兄弟姉妹は母と)。父を殺され、少年は一人ぼっちになってしまった。
「お父さんが自分を抱いてキスしてくれている夢をよく見る」。少年は遠くを見るような眼差しで語った。
少年を診てきた精神科医のラマダン・ハイロさんは「(残酷な体験が)トラウマになっている」と指摘する。
少年に「ガザから脱出したいと思わないか?」と聞いた。
「考えていない。父のようになって国を守る。ガザを愛している。ハマスは家族のようなもの」。少年は てらう ことなく答えた。
トラウマとなるほど少年の心に刻印されたイスラエル軍への憎しみは、新たなハマス兵士を生む。イスラエルは敵を作り出しているようなものだ。争いは絶えなくなる。
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(※)
‘Mind-Body Medicine’ は、UNRWAの88ヵ所の避難所にスタッフ計440人を派遣している。
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読者の皆様。田中はクレジットカードをこすりまくってガザに来ております。借金です。ご支援宜しくお願い致します。