東京都知事選挙はお祭りムードが年々濃くなる。候補者は地道な政策論争よりマスコミを利用しての派手な空中戦を好みがちだ。だがこの人は違った。宇都宮健児前日弁連会長-
ワーキングプアの問題解決に取り組んできた宇都宮氏がきょう、ブラック企業で使い捨てに遭った青年たちと都内で意見交換した。(主催:ブラック企業対策プロジェクト)
【当事者Aさん】
デザイン事務所に勤めていた34歳(当時)の男性はストレスから胃がんになった。病気療養から復帰した翌日から終電で帰宅する激務。体調が悪く、会社都合でよいからと退職を要求され退職届を出した所、自己都合扱いにされる。
労基署に2度異議申し立てをし、会社が退職届を改ざんしていたことが発覚した。失業保険が支払われるまで年金暮らしの両親から仕送りを受けてつないだ。
【当事者Bさん】
25歳の男性。大学の求人票で応募したアパレル商社の営業。同期が半年で半分になる会社だった。社長がワンマンで怒鳴る、殴るなど暴力を振るう。「あー、今日は殴られなくてよかったな」と思うくらい。殴られた証拠を取っていなかったので、労基署に行っても何もできないと言われた。
ノイローゼで会社に行けなくなった。土日も出勤、月100時間ほどの残業代も支払われていない。社長が真っ白な髪だったので今でも白髪の人を見ると吐き気がする。やりたい放題の会社が保護されすぎだと思う。
厚労省が昨年行った調査によると、82%にあたる4,189事業所で何らかの労働基準関係法令違反があり是正勧告を出した。主な違反内容は、やはり度を越した時間外労働と残業代の未払いだ。
・違法な時間外労働があった=2,441事業所(43・8%)
・賃金不払い残業があった=1,221事業所(23・9%)
厚労省の生ぬるい調査をもってしても、ブラック企業が世の中に はびこって いることが分かる。
主催者のブラック企業対策プロジェクトは、3項目の政策実現を都知事候補の宇都宮氏に要求した―
1) 都内の相談窓口の拡充(東京都には労政事務所が8ヵ所あったが、石原・猪瀬都政下でを6ヵ所に削減、さらに2ヵ所を削減しようとしている)。
2) 都内の中学校・高校でワークルール教育(労働法についての教育)をする
3) 東京都はブラック企業と取引しない。
都知事にはこれら3つを実現できる権限がある。本気になって取り組めばブラック企業の撲滅も可能だ。
安倍晋三首相は「世界一企業が活動しやすい国」を目指して労働法制の改正(改悪)を急いでいる。東京は特区として先導役を担う。ライバル候補の舛添元厚労相は「特区をやる」と意気込む。特区が実現されると、ブラック企業の犠牲となる労働者が溢れそうだ。
労働者を使い捨てにする国に将来はない。社会の構成員の大半は労働者だからだ。宇都宮氏は「世界一働きやすく暮らしやすい東京を創ろう」と呼びかけた。