民主党がガラガラと音を立てて崩れ始めた。衆院本会議できょう午後採決が行われた「消費税率引上げ法案」に民主党の57人が反対票を投じた。民主党の大半と自民党、公明党の賛成で法案は衆院を通過した。
大量造反について野田佳彦首相は記者会見で「党議拘束がかかっていた、厳正に対処する」と声を荒げた。自ら「政治生命を賭ける」としていた法案に反対されたのだから、ドジョウの腹わたはさぞや煮え返っているに違いない。処分は輿石東幹事長に一任となった。
処分が厳正だろうが、大甘だろうが、野田執行部を待つのは地獄だ。57人を除籍にすれば、民主党は衆院で少数与党となり内閣不信任案が通る。かといって緩い処分だと、谷垣自民党が参院で「消費税率の引上げ法案」に協力しない。もともと小沢一郎(元代表)を追い出して大連立し、主導権を握ることが自民の狙いだったからだ。とりあえず第一弾は自民の目論見通りに行った。
だが谷垣禎一総裁もじっとしていたら生殺しにされる。9月に予定されている自民党総裁選までに解散を仕掛けなくてはならない。谷垣総裁が首相になると困る森喜朗元首相、古賀誠元幹事長らは、総裁選で町村信孝元官房長官など古株を担ぐようだ。長老たちは世代交代されて力を失いたくない一心だから、懸命の多数派工作を繰り広げ、それなりの成果をあげるだろう。
小沢陣営は自民党の動向を百も承知で、新党結成の準備を進めている。小沢新党は「維新」と組むのか、あるいは野党のいずれかと組むのか。
小沢元代表は本会議後のぶら下がり記者会見で「解散総選挙は近い」と言い、小沢グループの東祥三事務総長も記者会見で「小沢一郎のもとに集まった議員たちで次の展開が始まる」と力を込めた。
野田首相が自らの首を差出し、自民中心の連立政権となれば上記のシナリオは回避される。その可能性もゼロパーセントではない。民主党衆院議員はもう1年間、国会議員であり続けることができる。
いずれにせよ民主党政権が永田町から消える日は秒読みに入った。民意を汲まなかった菅・野田政権の当然の結末だ。消費税増税に反対票を投じた議員の多くは、原発再稼働にも反対している。
毎週金曜日、官邸前に響き渡る民の声に耳を傾けなければ、どんな政権が登場しようが野田政権と同じ道をたどる。
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