「11日の石原知事の出馬表明は晴天の霹靂、驚いた。何が起きたのか分からなかった」。松沢成文・神奈川県知事はうなだれた(写真)。ハシゴを外されるとは、こういうことを言うのだろう。
松沢氏は14日、東京都庁で記者会見し都知事選挙(3月24日告示、4月10日投票)への出馬を取りやめることを正式に表明した。
共同記者会見した石原都知事が鼻白みながら理由を説明する(写真)。「選挙情勢を分析した結果、(松沢氏の当選が)覚束ないことが分かった。松沢さんという友人を失っても、東京を失うわけには行かなかった。苦渋の決断だった」。
石原氏は激しく目をしばたたかせて語った。氏が真相を明らかにする際に見せる独特の癖である―「110%引退するつもりだった。その準備もしていた。心身の限界も感じていたからね」。
松沢氏によれば2月上旬に石原知事から「君しかいない」と後継を託されたという。今月1日、都内で記者会見した松沢氏は石原都政を継承する内容の政策を明らかにし、石原氏を褒めちぎった。すっかりそのつもりになっていたのである。
だが、松沢氏では勝てないと見るや、石原氏は出馬に転じた。松沢氏以外が勝つようなことにでもなれば3期12年の石原都政は否定される。それだけは避けたかったのだろう。独裁者の心理でもある。
石原氏がこだわる築地市場の豊洲への移転について筆者は質問した。
「関東大地震の教訓に基づいて建てられた築地市場は今回の地震でもビクともしなかった。一、豊洲は地震の際、液状化現象が起き有害物質が地表に噴出すことが懸念されているが・・・」
天井を仰ぐ石原知事。だが、この質問は途中で遮られた。今日の記者会見のテーマにはそぐわないという理由で。やはり新銀行東京と築地移転は否定されたくないのだろう。悪政を重ねてどうしようというのか。
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