11日、8人のフリージャーナリストたちは中央合同庁舎1階ロビーに集合した。記者クラブ側から「出禁(出入り禁止)」をちらつかせられているためだ。何が起こってもそれを中継し記録しなくては闇に葬られる。
記者会見室には記者クラブの端っこを通過して入る。会見室入り口の掲示板に張られている紙を見て筆者は仰天した。「フリー記者による動画撮影が行われ、記者クラブ問題に関する繰り返しの質問が行われたことは極めて遺憾。ルールが守られない場合は記者会見への参加を認めない」と書かれているのだ。
記者クラブがここまで破廉恥とは思いもよらなかった。張り紙は、フリーランスに対する言論弾圧の証拠をさらすようなものだからだ。
「出禁」の脅しにも怯むことなく我々はご法度の動画中継をし、記者クラブ問題についての質問も行った。動画中継も記者クラブ問題についての質問も控えたりしたら、記者クラブの脅しに屈したことになるからだ。
この日、総務大臣記者会見の動画中継をしたフリーランスは、畠山氏はじめ岩上安身氏、寺澤有氏の計3人。事態を憂慮し駆けつけたフリーランスは最終的に12人に達した。
来る日も来る日も大臣からどんなイヤな顔をされても記者クラブから「出禁」で脅されても怯まず記者クラブ問題を追及してきた畠山氏は次のような質問をした。片山大臣が12日から電気通信の国際会議に出席することに絡めた質問だった―
「日本の記者クラブの閉鎖性についてはOECDやEUから毎年改善要求が出る。もし外国の大臣から日本の記者クラブに関する質問が出たらどう答えるか?」
片山大臣は「今の記者クラブの現状と畠山さんをはじめとする色んな方(フリー記者)の意見があることを伝えます」と答えた。
岩上氏、寺澤氏、不肖田中も世界と世間の常識から掛け離れた記者クラブ問題について質問した。
水滴が岩に穴を穿つように根気よく質問した成果だろうか。片山大臣がついに「記者クラブは話し合いに応じるように」と勧告したのである。
権力をチェックしなくてはならないはずの記者クラブが権力側から「こうしなさい」と指導を受ける。同じジャーナリストとして実に嘆かわしい事態だ。これが記者クラブの真の姿なのかもしれないが。
記者会見後、我々フリーは総務省広報室の松田浩樹室長と協議することになった。フリーの側からは我々の要望を記者クラブ側に投げかけて頂きたいと松田室長にお願いした。
要望はまとめればわずか一点だった。「クラブの皆さんと公開の場で話し合いたい」。
フリー側が丸一年間、根気強く交渉を続けてクラブ側と話したのはわずか2回。それも幹事社からの事情聴取だった。当月の幹事社は前の幹事社から引継ぎさえ受けていないので、こちらは一から説明し直さなくてはならなかった。「出禁」を言い渡すような決定でさえ議事録もないという。
フリーランスに対してこの程度の認識しかない彼らが果たして大臣の勧告に従うだろうか。むしろ予告通りフリーランスを「出禁」に処してくるのではないだろうか。予断を許さぬ展開になりそうだ。
◇
田中龍作の取材活動は読者の皆様によって支えられています。