ガザ取材後記 ~爆撃直後の村を再訪して~

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戦争が日常生活の中に溶け込んでいるガザ(16日、写真:筆者撮影)

 アルアクサ・インティファーダ(2000年発生)以来、長期に渡ってガザの封鎖を続けてきたイスラエルが基本的に封鎖を解除するというが、それで経済が幾らかでも潤うのだろうか。この目で見届けたい。

 爆撃直後に訪ねた家族は健在だろうか。彼らは生活をつないで行けているのだろうか。この耳で聞きたい。私をガザ取材に駆り立てたのは、この2つの理由でした。

 前者の答えはあまりにも簡単でした。ガザの経済は封鎖が解除されたからと言って上向くものではありませんでした。産業の育ちようがないからです。

 セメントや鉄筋などの建設資材は軍事転用が可能なことから、ひき続き搬入できません。工場などを再建することは不可能なのです。

 農業で経済を復興できるかというと、先ず不可能です。農産物はチューリップとイチゴ以外は輸出禁止なのです。それ以前にオリーブやレモンを育んだ畑は、侵攻してきたイスラエル軍の戦車の轍でズタズタになっていました。

 大きくなるのに年数のかかるオリーブの樹々が根こそぎ倒されているさまは、戦争の現実を物語っていました。

 今回の取材で私は昨年、爆撃直後に入った村を再び訪ねることを最優先しました。村が丸ごと消えたアル・ショハダ村では、ハドゥルさんという男性と再会できました。(17日付け拙稿『娘たちがいなかったら頭を撃ち抜いて死ねるのに』)

 集団虐殺があったとされるガザ市ザイトゥーン地区には、何があろうとも再訪することを決めていました。イスラエル軍によって住民約100人が一か所に閉じ込められて爆撃され30人が死亡したとされる事件は国連人権理事会も追及しています。(17日付け拙稿『集団虐殺を生き延びた村人は後遺症に苦しむ』)

 国連人権理事会の公聴会で証言したヘルミ・アルサムーニさん(27歳)に再会を求めたことは、ジャーナリストとしては当然の行為ですが、後悔もしています。子供3人をイスラエル軍によって射殺され、自らも閉じ込められた痛憤の惨事を、必要以上に思い起こさせてしまったということです。

 ハドゥルさんもヘルミさんも衰弱しているのが手に取るように分りました。2人に限らずカザの人々の多くは貧困と絶望のなかで衰弱しているようでした。(23日付け拙稿「貧困と絶望が支配する街」)

 ハマスはイスラエルの経済中心都市であるテルアビブを射程に収めたロケットの開発に成功したそうです。イスラエルもMD(ミサイル・ディフェンス)をこのほど完成させました。

 どちらが先制するのか、それとも睨み合いが続くのか。もし戦端が開かれるようなことにでもなれば、今度は間違いなく阿鼻叫喚の地獄がガザに現出することになるでしょう。それだけは避けなければならない、との思いを強くしつつパレスチナの地を後にした次第です。

  ◇
 田中は只今、日本に帰国致しました。停電することなく電気が来、きれいな水でシャワーを浴びることの有難さをかみ締めています。大手メディアが報じないガザの現状を一行でも多く伝えれることができればと思い、現地で取材・執筆に励んでまいりました。

 今回の取材行で節約に節約を重ねましたが、予想以上に経費がかかりました。東京から持ち込んだ練り状みそ汁とパンで食費を浮かせるように務めましたが焼け石に水でした。カードローンの返済地獄が待ち受けております。皆様の支援を賜れば幸甚です。

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