バラク・オバマ米大統領は10日、ノルウェー・オスロ市庁舎で開かれたノーベル平和賞授与式に出席、受賞演説で「貧困と残虐の虜囚になってはならない」などと述べ、米国の好戦的な一極主義が世界にもたらした惨禍を遠回しに詫びた。
わずか9日前に「アフガニスタン駐留米軍の3万人増派」を正式発表したオバマ大統領のノーベル平和賞受賞に懐疑的な世論は国際社会に少なくない。授与式当日、ノルウエー市内では反戦運動家らが抗議のデモを繰り広げた。
懐疑や批判の声を意識してか、オバマ大統領は冒頭挨拶に続いて「受賞にあたって大きな問題は、私がイラク戦争とアフガン戦争を戦う米軍の最高指揮官であることだ」と率直に語った。「若い米兵を遠き地に派遣しているのは私の責任だ。彼らは殺したり殺されたりしている」とも述べた。
オバマ大統領のノーベル平和賞受賞は、ノルウェー・ノーベル委員会も認めるように「(平和を)呼ぶ動きとなる」ことへの期待であるのだ。筆者もそれで十分だと思う。
ブッシュ前政権の8年間は単独行動主義で環境を疎かにしてきた。CO2の排出量を規制する「京都議定書」には調印せず、利権最優先で戦争を起こすなどした。イラク戦争もアフガニスタン戦争も前政権の負の遺産である。オバマ大統領は反省の上に立ち、これらを全面的に改めようというのだ。
特にイラク、アフガンの両戦争で敵陣営だったイスラム世界との融和を掲げていることは評価に値する。
ブッシュ前大統領が悪の枢軸と呼んだイランのモッタキ外相は「好戦的な一国主義(ブッシュ前政権を指す)を変えるのなら反対する理由はない」と認める。パレスチナ自治政府のサイーブ・エレカット交渉相も「オバマ氏であれば、イスエラエルを占領地から撤退させることができるものと期待している」と賞賛する。
事実オバマ氏は大統領に就任すると間もなくイスラエルのネタニヤフ首相に「占領地への入植凍結」を呼びかけている。
PLOのアラファト議長は、「土地と和平の交換」と言われたオスロ合意をイスラエルとの間で締結したことでノーベル平和賞を受賞した(1994年)。韓国の金大中大統領は、金正日総書記との南北首脳会談で受賞している(2000年)。両者も受賞当時、パレスチナ和平と南北統一への期待料といわれた。
オバマ氏が提唱する「環境政策」「多極主義」「イスラム世界との融和」は、ブッシュ前政権の8年間で悉く破壊された。「核」は拡散し世界は危うい状態になった。
いずれも国際社会が全力を挙げて回復改善しなければならない問題だ。オバマ氏のノーベル平和賞受賞を機に世界がいち早くそれに気づき動けば、期待料でおつりが来る。
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