「横田めぐみさん娘の義父 日本出身」― 毎日新聞(4日付朝刊)が一面トップで放ったスクープは見事である。
あくまでもスクープだ。特ダネ(抜きネタ)ではない。各社、後追いのしようがないからだ。公安筋から出たネタであれば後追いできるが、毎日新聞の記事は、在日韓国朝鮮人界隈が情報源であるようだ。
記事中の写真2枚は、公安筋から出たものではないことの証だ。「めぐみさんの娘であるウンギョンさんの近影」と「件の義父の高校時代の写真」である。
2015年頃、撮影したと見られるウンギョンさんの写真は北朝鮮とつながりがなければ、入手できる代物ではない。
記事のクレジットは「関係者」となっているが、取材源への当然の配慮である。ソースをわずかにでも明らかにすると、情報提供者に災厄が降りかかる恐れがある。例えば北朝鮮に親戚がいたりしたら、その親戚が迫害されるだろう。
一方で、記事の情報源が北朝鮮とは限らない。韓国ルートもありうる。理由は以下だ―
民団と朝鮮総連は、組織的には断絶状態だ。だが飲食、パチンコ業界の中で、つきあいがあり、それぞれの情報が入ってくるのである。
在日韓国朝鮮人界隈から入手したと思われるのは、件の義父が帰還事業による北朝鮮帰国者という点である。帰国者の名簿は日本赤十字にあるが、記者に見せるはずがない。
スクープ記事を取材執筆した記者の名前が「金寿英」となっているのも納得がいく。
1959年から始まった帰還事業で北朝鮮に渡ったのは、在日朝鮮人とその日本人妻ら9万3千人あまり。植民地政策や朝鮮戦争により増えた朝鮮人を祖国へ帰すのが、日本政府の目的だった。
当時、「北朝鮮は工業が発達した国」「韓国は独裁と貧困」というように、現在とは正反対の評価を受けていた。
日本マスコミは北朝鮮を訪れ、「地上の楽園」報道を繰り広げていた。野党も社会主義宣伝のため同調した。
毎日新聞の記事は「拉致」と「帰還事業」が結び付いたのは “歳月の流れ” とするが、そうではない。両者を結び付けたのは “日本と朝鮮半島をめぐる負の歴史” ではないだろうか。
〜終わり~