【独裁者と音楽】 安倍晋三のAKBと「ヒトラーの第9」

東洋人でありながら西洋人であるヒトラーとのコラージュがよく似合う。こんな日本人政治家も珍しい。=国会前 撮影:筆者=

東洋人でありながら西洋人であるヒトラーとのコラージュがよく似合う。こんな日本人政治家も珍しい。=国会前 撮影:筆者=

 中学生以下の知的レベルしかない男の趣味なので、筆者は驚きもしなかったが、各国の首脳たちは、さぞかし呆れたことだろう。

 2013年12月、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳晩餐会で、安倍首相はAKB48の歌と踊りをライブで披露したのである。 

 ドイツのメルケル首相は今年7月、G20首脳たちに、ベートーベン交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」を聞かせた。 

 アンゲラ・メルケルとアベ・シンゾー。知性の差がそのまま音楽に現れたとしか言いようがない。

 安倍をヒトラーにたとえる向きがあるが、音楽の好みはヒトラーの方が はるかに 高尚だ。

 1942年4月19日、ナチスは総統誕生祝賀※の前夜祭として、ドイツを代表する指揮者フルトベングラー(通称:フルベン)にベートーベンの交響曲9番を全楽章演奏させた。(※ヒトラーの誕生日は1889年4月20日)

 ヒトラーに抵抗していたフルベンは、あの手この手で逃げまくったが、ゲッベルスの工作によりウィーンからベルリンに戻され、タクトを振らざるを得ない羽目となった。

 ナチスドイツが敗戦に向かって転がり始める「スターリングラードの戦い」の前々月のことである。

硬い表情でヒトラー(左下)にお辞儀をするフルトベングラー(右上)。1942年4月19日のコンサートで撮影されたものではないようだ。=田中家所蔵のCDジャケットより=

硬い表情でヒトラー(左下)にお辞儀をするフルトベングラー(右上)。1942年4月19日のコンサートで撮影されたものではないようだ。=田中家所蔵のCDジャケットより=

 「巨匠のタクトとベルリンフィルによるベートーベン」は、ヒトラー総統の名声を高めるのにもってこいだった。

 演奏はドイツ国内中にラジオ中継された。幸か不幸か、録音が残っている。それは「ヒトラーの第9」と呼ばれる。

 「シャリシャリ・シャリシャリ」の擦過音も入り、録音状態は決して良くない。もちろんモノラルだ。音は くぐもって いる。

 不承不承の演奏は、それでも聴き手をゾクゾクさせる。何度聞いても鬼気迫るものがある。一抹の殺気さえ覚えるほどだ。

 名演と謳われる1951年演奏の「バイロイトの第9※」よりこちらの方が聞きごたえがある。(※バイロイト=ドイツ・バイエルン地方の小都市)。

 ヒトラーに抵抗したにもかかわらずナチ協力者の汚名を着せられたフルベンは、戦後2年間、タクトを振ることが許されなかった。

 独裁体制下で憂き目を見たフルトベングラー。稀代の指揮者は「権力が悪なのではなく、権力の乱用が悪なのである」と遺している。

 長野オリンピックで第9を振った小澤征爾は、同じような目に遭うことはないだろう。アベ・シンゾーは小澤征爾なんて聞いたことがないだろうから。(敬称略)

     〜終わり~

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