池袋西口は人気アイドルが現れたような騒ぎとなった。「ユリコ、ユリコ」。数千人がファ―ストネームを連呼する。
警察官が雑踏警備にあたったが、人々は規制ロープを越えて車道にあふれた。都知事選最終日の30日、小池ゆりこがマイク収めに選んだのは、地元の池袋だった。
「一人も味方はいないと思っていたら、こんなにも多くの人が集まってくれた・・・(バスで動員をかけた)あちら(増田陣営)が徴兵制なら、こちらは志願。熱気が違うんです」。
小池は軍国オバサンらしい比喩で聴衆を沸かせた。
伏魔殿と言われる都議会と対峙してみせることで同情を買うことも忘れなかった。「都庁に行ったら(私は)火あぶりになるかもしれませんよ」。
小池の演説に熱狂していた有権者に話を聞いた。
子どもの手を引いて訪れた40代主婦は、「期日前で小池さんに入れて来た。女性(都知事)になってもらいたい。女性の気持ちは女性にしか分からない」と得々と述べた。
「小池さんはタカ派ですよね。つくる会からも支援を受けてるし」と聞くと、目をぱちくりさせた。
興奮した表情で「これぞ民主主義だな~」と話し合っていた男性4人。うち1人(30代)は「小池さんに入れる」。
小池のどの政策を評価したか尋ねると、うーんと考え込み、「外国人参政権に反対と明確に打ち出したから」。
小池は17日間で有権者をすっかり洗脳したようだ。
小池のワンフレーズごとに聴衆からは「そうだ~」の合唱が起きた。「ユリコ、ユリコ」「都知事、都知事」・・・ワンテンポずつズレながらコールは こだま していった。
緑のペンライトが揺れた。緑のハンカチを握りしめて恍惚となる中年女性の姿もあった。
ヒトラーが支持者で満杯となった競技場で熱弁をふるうモノクロ映像を見ているようであった。
最後の街宣が終わり熱気さめやらぬ会場で、小池支持者と口論している年配の女性がいた。原発と核武装をめぐって意見が対立していた。
「猪瀬、舛添の時から、都民はダメだ・・・と思っていた。また騙される。(小池さんは)ミニヒトラーですよね。話術はうまいし・・・」。話し終わると女性はがっくりと肩を落とした。
(敬称略)
~終わり~