戦場取材経験豊かな記者たちが15日、都内でシンポジウムを開いた。標題通り「ジャーナリストはなぜ戦場に行くのか」を2時間余りにわたって語り合った。
中東駐在歴約30年の川上泰徳氏(元朝日新聞記者)の話は、経験に裏打ちされていた―
「現地に行って自分の目で見る。人の話を聞く。事件を通して社会の破たんが見えてくる。社会の構造、権力の構造が見えてくる。そうして見えてきたものを日本に伝える。普段見えないものが危険地帯の中で見える・・・」
田中は戦場取材の意味を次のように考えている。ジャーナリストが行かなかったら誰が「いま現地で起きていること」を伝えるのか?と。
スマホの発達で住民が現場で起きていることを写真や動画でネットに上げるようになった。だが、誰がいつ、どのように攻撃して来てどうなっているのか・・・5W1Hが判然としない。
いずれかの勢力のディスインフォメーションの可能性もある。被害を誇張したり捏造したりして敵方を貶めるのは、戦争の常道であるからだ。
地域研究の権威と称される学者先生でも今起きていることは海外メディアで知る他ない。海外メディアがいつも正しいとは限らない。何より現地語から日本語への翻訳ギャップがつきまとう。
実際、学者の唱える説は現地に行くと1ミリもなかったりする。
川上氏は日本人であることの利点も話した。「日本人ということで歓迎される。(日本人記者は)欧米の記者がカバーできない所までカバーできる」と。
キリスト教徒でもシーア派でもスンニ派でもない日本人は、中東では敵視されない。いや、敵視されなかった。
愚かな首相がISと戦う国にカネをバラまき、イスラエルと兵器の共同開発を進める。その結果、日本は中東の国々を敵に回してしまった。
昨年末、田中はベイルートのテロ現場で住民から「どうして日本はアメリカとフレンドなのか?」と言われた。アラブの民の日本を見る目は、険しくなっているのだ。
ジャーナリストが戦場に行かなければ、こうした現実は日本に伝わらない。
~終わり~