「欧米の砦」がロシアの手に落ちようとしている―
ウクライナの戦略要衝にしてポロシェンコ大統領が死守せんとするドネツク州マリウポリ。東へ30km(※1)の街シロキナはすでに親露武装勢力の支配下にある。
シロキナに向けて取材車を走らせていたら、途中半分(15km)も行かぬうちにウクライナ軍の前線にぶつかった。
兵士たちが重機を用いてトレンチ(塹壕)を掘っている最中だった。そこに戦車2両が配備されようとしていた。筆者らが到着する1時間前、近くに親露勢力からの砲撃があった、という。ウクライナ軍としては、ここに前線基地を急いで建設しなければならない。
東欧駐在の長かった西側軍事筋によれば、「ロシアはノドから手が出るほどマリウポリが欲しいはず」と話す。「マリウポリを取ればクリミア半島と陸続きになり、アゾフ海の権益も手中に収めることができるからだ」と説明した。
これまでにも述べてきたが、マリウポリは冷戦時代にたとえるなら西ベルリンにあたる。西側陣営の最前線だ。
それが、東へわずか15km(※2)の所まで親露武装勢力に迫られているのだ。前出の西側軍事筋は「マリウポリをいつ落とすかはプーチン大統領の意志しだいだ。その気になればすぐにでも落とせる」と語った。
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(※1)30km:東京駅から横浜までの距離。
(※2)15km:東京駅から羽田空港までの距離。