1日、筆者は大規模虐殺があったとされるフザー村に入った。この日午前8時からハマスとイスラエルが「72時間停戦」に入ったのを利用したのである。
ガザ南東部のフザー村(人口約7千人)は、イスラエルとの国境にある農村だ。村人たちはいち早く一時帰宅していた。残された家族の安否確認や家財道具の搬出に帰ったのだ。
次から次へと遺体が見つかり、簡易担架に乗せられて運び出されていった。後頭部がすっぽり抜け落ちた男性の遺体が、不吉なものを予感させた。
東西にまっすぐ伸びる村の基幹道路を、東方=イスラエル国境に向かって進みきった所が、大きな瓦礫で塞がれていた。
路地の奥から村人たちの大声が聞こえてくる。殺気立っていた。パレスチナ人記者が筆者に向かって「村人が処刑されている」と英語で言った。
農家の浴室には6人の遺体が折り重なるようにして横たわっていた。浴室の壁には弾痕が無数にあり、血のりがべっとりと付着していた。
イスラエルが村に侵攻したのは13日前だ。その頃から虐殺が伝えられ始めていた。遺体は10日以上経っていることになる。夏の暑さも手伝って腐乱が進んでいた。異臭が鼻を突いた。
村は瓦礫野原と化していた。瓦礫の下に数えきれないほどの遺体が埋まっているはずだ。潰れた顔と、手と足を地上にのぞかせた男性の死体もあった。
「神がイスラエルを殺すだろう。イスラエルを破壊するよう神に祈ろう」。中年女性が絶叫した。
イスラエル領土内からの砲撃は間断なく続いた。イスラエル軍は「停戦中でもハマスの軍事用トンネルの破壊は続ける」と宣言していた。
一時帰宅から4時間経つか経たない頃だった。男性2人がイスラエルのスナイパーに撃たれた。
絶えず上空を舞っていた無人攻撃機の飛行音が、ヒステリックなほど騒々しくなった直後だ。
村人たちは再び大脱出を始めた。基幹道路は人の洪水のようだ。
その頃、中東の衛星放送『アル・アラビヤ』は、イスラエルが国連に「停戦破棄」を通告したことを速報で伝えていた。
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戦争の現実を伝えるために、あえて凄惨な写真の公開に踏み切りました。
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