きょう午後、新宿南口の横断橋で中年男性が焼身自殺を図った。集団的自衛権に抗議しての自殺との見方もある。
歩道橋近くのビルのガードマンが事件のもようをモニター画面で見ていた。ガードマンによると事件が起きたのは午後1時頃。
男性は高さ3m近くある歩道橋の橋げたに登り、トラメガで何かを訴えていた。「集団的自衛権、反対」を叫んでいたともいわれている。
警察官が駆けつけ男性を橋げたから降ろそうとしたが、男性は制止を振り切って自分の体に火をつけた。
消防が男性に水をかけ、救急病院に搬送した。容体は不明。
事件をツイッターで知った女性(50代)が、白菊の花束を手向けに訪れた。女性は現場近くで商店を営む。
女性は「集団的自衛権に反対して自殺を図ったと聞いたので(花を手向けに来た)」と話す。
「アメリカに加勢してよその国に行って戦争をする。それが集団的自衛権だと知り仰天した。そんなことが許されますか?」。女性は訴えかけるようだった。
抗議の焼身自殺で思い出すのはベトナム戦争だ――
1963年6月、サイゴンで、政府の非道を訴えるべく一人の僧侶が焼身自殺した。マスコミを事前に集めアメリカ大使館前で行った覚悟の自殺は、全世界に衝撃を与えた。
宗主国フランスに次いでベトナムの後ろ盾となったアメリカ。1955年に傀儡政権を樹立した反共主義者でキリスト教徒だった南ベトナムのゴ・ディン・ジエム大統領は戒厳令を敷き、共産主義者のみならず仏教徒をも弾圧した。
ところが大統領実弟の秘密警察長官夫人で、実質的ファーストレディだったマダム・ヌーはそれを見て「坊主のバーベキュー」と言い放った。あまりに非道な物言いに世界はきびしい批判を浴びせた。
米国は当初傀儡として使っていたゴ・ディン・ジエム政権を最後は見放した。
ジエム大統領とマダム・ヌーの夫(秘密警察長官)はどうなったか。2人はその年の秋にクーデターで政権を追われ射殺体で発見された。
もし安倍政権や世論が、今回の焼身自殺を嘲笑い、真摯に向き合わなければ、結果として何を招来するだろうか。歴史の教えるところは明白だ。