国会・霞が関周辺は特定秘密保護法が強行採決されようとしていた昨年末と似たような雰囲気になってきた。日比谷野音を満席にする反戦集会が開かれ、官邸前に押し寄せた市民たちが安倍政権打倒のシュプレヒコールをあげる。今夜の光景を「デジャビュ(既視感)だ」と話す参加者もいた―
「ファシストに死を」。スペイン語で染め抜かれたノボリ旗が翻る。高さ3mはゆうにある。巨大なノボリ旗をかざした男性が、首相官邸に向かって横断歩道を渡ろうとしたため、警察官と押し問答になった。殺気を帯びた雰囲気も秘密保護法の時と似ている。
「憲法壊すな」「独裁倒せ」…参加者のシュプレヒコールとドラムの音が男性の背中を押した。男性(70代)は60年安保の闘士だ。「集団的自衛権の行使容認は憲法破壊の総決算だ」「きょうは若い世代の応援に来た」。往年の闘士はぶっきらぼうに言った。
幼稚園に通う我が子の手を引いて参加した母親(40代)は「国民の無関心が怖い。自分たちが行動を起こすことで関心を持つ人が増えるようにしたい」と訴えるように話す。母親は眉を八の字にして不安げな表情だ。
日比谷野外音楽堂には主催者発表(※)で5,000人が参加した。手製のプラカードを携える人が目立つ。「平和憲法を狂気から守れ」と書いたプラカードを持っているのは文京区の学習塾講師(70代男性)だ。
「いろんな犠牲があって今の憲法がある」「死ぬのは若者、自衛隊の使い捨て、人が道具になる」「危険性が迫っていないのに、攻めて来る国があるかのように仕向けている」…男性の言葉は徐々に熱を帯びていった。
横浜から足を運んだ元教師(60代女性)は「子供が戦地に送り出されるのは反対。教え子は大切だもの」と目を大きく見開きながら話した。
日比谷の参加者達は集会終了後、国会に請願デモに向かった。官邸前に差し掛かるとデモ隊はドラムに合わせて声をあげた。「安倍は辞めろ」「憲法壊すな」・・・
安倍首相は「集団的自衛権の行使容認」を今国会中に閣議決定したくてたまらない。世論の反対などお構いなしだ。特定秘密保護法とセットになれば、時代は一気に戦前へと逆戻りする。
◇
※
日比谷野音
呼びかけ:「解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会」
官邸前
呼びかけ:「怒りのドラムデモ」