特定秘密保護法案は みんなの党、日本維新の会が賛成に回ったことで急速に法案成立の可能性が高まってきた。「軍国主義者」を自ら任じて恥じることのない安倍晋三首相の薄ら笑いが目に浮かぶ。
「子どもを戦争に行かせたくない」「日本を再び戦前・戦中の暗い時代に戻してはいけない」…危機感を募らせる人々がきょう、全国14ヵ所で、秘密保護法案に反対する集会・デモを行った。
日比谷野音での集会は午後6時30分からの開会だったが、6時を少し回った頃には超満員となり、入場制限がかけられた。会場の外も人で埋め尽くされた。
主催者(STOP!「秘密保護法」大集会実行委員会)発表によると、参加者の数は1万人だが、それでは効かなかったのではないだろうか。内も外も立錐の余地がないのである。日比谷の森には背筋が寒くなるような殺気がみなぎっていた。
「再び戦争と暗黒政治を許すな」と書いたゼッケンをつけ野音の入り口に立っているのは「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟」の人たちだ。
メンバーの一人である70代の女性(都内)の父親は、昭和初期、反戦を唱えて治安維持法違反で逮捕され、9年間も獄中にいた。「治安維持法を復活させてはいけない」。女性は唇を結んだ。
きょうの集会のために大阪門真市から足を運んだ男性(83才)は、同級生の中に志願兵となる友人が少なくなかった、という―
「この法律が通ったら先輩たちが死んだ先の戦争が繰り返される。法案が通ってしまうかもしれない。戦争になるかもしれない。けれども権力者のすることを指をくわえて見過ごすわけにはいかない」。喉頭ガンを患いスムーズに発声することができない彼は、声を絞り出すようにして話してくれた。
戦争を知らない世代も危機感で一杯だ。きょうは年若い参加者が目立った。
「こんな法案が通ったら皆が委縮して本当に怖い世の中になる。止められないかもしれないが、止めなくてはと思い来た」。30代の女性(イラストレーター)は一気にまくし立てた。
参加者たちは2手に分かれてデモ行進した。銀座パレードと国会への請願デモだ。衆院と参院の議員面会所では、法案に反対する野党議員たちが待ち構えた。与党にすり寄った みんなの党と日本維新の会の姿はなかった。
「秘密保護法案反対」「国民の知る権利を奪うな」……国会議員とデモ隊が一体となったシュプレヒコールが、暗闇の国会議事堂に吸い込まれて行った。
《文・田中龍作 / 諏訪都》