ウクライナ危機が新局面を迎えた。28日、極右組織「ライトセクター」が国会を封鎖したのだ。ライトセクターは3日前、幹部のサチコ・ビリーが内務省の特殊部隊によって射殺されたことから「報復」を宣言していた。
ライトセクターはアルセン・アバコフ内務相(兼務・警察庁長官)が辞任するまで封鎖を解かない構えだ。
国会前は右翼ではない国会議員や市民100人余りが封鎖に加わり騒然となった。彼らは口々に「アバコフ内務相の辞任と訴追」を求めた。
「ヘティ(去れ)」「ハンバ(恥を知れ)」…シュプレヒコールが繰り返しあがる。
ある国会議員はトラメガ(小型拡声器)を手に声を大にした―
「(ヤヌコビッチ前大統領の追放につながった)独立広場(マイダン)の戦いでは100人近い市民が治安警察の凶弾に倒れた。(警察のトップだった)アバコフ内相の責任を法廷で追及すべきだ」。
「アバコフ(内務相)は辞任して法廷へ」と手書きしたプラカードを持つ女性(50代)に聞いた。この女性も右翼ではない。
「ヤヌコビッチ前政権の閣僚は皆辞めたのにアバコフだけなぜ新政権に残ったのか?」。女性は憤った。
筆者が「ライトセクターを支持するのか?」と尋ねると「支持する。マイダン(独立広場)の攻防では最前列で戦ってくれたのが彼らだから」と歯切れよく答えた。
《国会前にライトセクターのテント》
ライトセクターなしには戦いの勝利はありえなかった。ヤヌコビッチ前大統領の追放もあり得なかったのである。にもかかわらず新政権は「ライトセクター」の幹部サチコ・ビリーを粛清した。サチコは戦術の要だった。独立広場(マイダン)の戦いを支持した普通の人々が怒るのは当然だ。
始末されたサチコのスポンサーはロシアの諜報機関だったことが明らかになっている。サチコのようにロシアから金が出ていたりすると国会を封鎖するライトセクターを排除するのは容易ではなくなる。
極右のライトセクターにロシア系市民を攻撃させ騒乱状態を作り出せば、ロシアにとってはまたとない軍事介入の口実となる。ロシアにとってライトセクターは十二分に利用価値があるのだ。
国会前にはライトセクターのテントも立った。独立広場の攻防の際、政府施設や国会議事堂周辺は警察が守りを固めたため、「革命戦士」たちもここまでは侵攻できなかった。今回、敵陣深く入ったのだ。
国会封鎖で新政権の屋台骨が揺らぐのは避けられそうにない。