特定秘密保護法案が、早ければ来週にも審議入りしそうだ。現行案のまま可決成立してしまえば、国民の知る権利は大きく制限される。
戦前の治安維持法の復活を危惧する野党議員と市民が31日、参院会館で政府と交渉を持った。政府側は法案の主官庁である内閣府をはじめ警察庁、総務省、外務省、防衛省の中堅官僚が出席した。
3次の交渉で「官僚が恣意的に運用し」「市民も監視対象となる」恐れがあることが改めてわかった。
海上保安庁、資源エネルギー庁、国税庁、警察庁などのトップは官僚だ。「彼らが特定秘密を指定することになるのか?」との問いに内閣府は「所管事項に関するものがあれば」と答えた。官僚が秘密事項を指摘できるのである。それも何が秘密かも国民に知らせないまま。
国民から選ばれたわけではない官僚が国民の知る権利を制限するのである。エネ庁は原発を所管する。国税庁は官僚にとって目障りな政治家の資産内容をほぼすべて把握する。警察庁はこの国最大の捜査機関だ。
これらの機関はただでさえ絶大な権限を持っているにもかかわらず、その長である官僚が特定秘密を指定できるのである。
監視対象が際限なく広がることも憂慮されている。仁比そうへい議員(共産)は次のように迫った―「諜報活動をやっている人に限られるというが、(スパイを)全部特定している訳ないだろう。結局、あらゆる市民をターゲットにするしかないんじゃないか?」
警察官僚の回答は「慎重に捜査するしかない」だった。内閣府の役人は「特定秘密と知った上で悪質な場合・・・」と説明した。特定秘密を知っているかどうか、個人の頭の中を知ることは難しい。仁比議員は「捕まえて自白させるしかないんじゃないか」、とさらに突っ込んだ。
会場には約150人の市民が詰めかけた。市民も官僚に法案の疑問点を質した。
1929年(昭和4年)生まれの男性は、秘密保護法を死刑もあった戦前の国家機密法(軍機保護法、国防保安法、治安維持法など)と対比しながら次のように質問した―
「公務員は(処罰されれば)懲戒免職となる。1,000万円もの罰金はとても一人で払いきれる金額ではない。一族郎党までを締め付けることになる。何ゆえ、このような重罰を科すのか?」
内閣府は「おカネを積まれて情報漏えいをする場合もあるのでこういう形にした」と答えた。
厳罰化して公務員からは情報が漏れないようにし、権力にとって知られたくない事柄に市民やジャーナリストを近づけないようにする。秘密保護法の趣旨をワンセンテンスで表現するとこうなるのではないだろうか。
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