【衆院選・東京8区】太郎の応援にジュリーが来た 「原発を止めないと、何も始まらない」

太郎の応援にジュリーが来た

「若者がちゃんと打って出てくれた」と64歳のジュリー。=14日、JR荻窪駅北口。撮影:中山栄子=

 JR荻窪駅北口ロータリー広場。ステージの前には、1時間以上前だと言うのに2、30人ほどの中年女性たちが群れをなしていた。今日は、ジュリーこと沢田研二さんが、長い芸能生活で初めて選挙の応援演説に入るというのだ。
 
 沢田さんは福島原発事故の後、F.A.P.P.(フクシマ・アトミック・パワー・プラント)という曲の作詞を手掛け、話題になっていた。「バイバイ原発」のフレーズが何度も登場する。
 
 午後6時過ぎ、沢田さんはサングラスにラフなTシャツ姿で現れた。この頃には1,000人ほどもいただろうか、広場には立錐の余地もないほど人が溢れ、後ろからは「押さないで」「見えないよ!」の声も飛び交った。
 
 「今、ほとんどの表現者が口を閉ざしている中、事故が起こるずっと前から皆さんに対してメッセージを発信し続けている、素敵な先輩がいます。」立候補後、多くの芸能関係者に「応援を」と声をかけては断られたという山本候補は、沢田さんをこう紹介した。
 
 「僕は、誰にも頼まれていないんですが、(憲法)九条を守ろうという歌とか、3.11の時の歌とかを勝手に書いて歌っています。そういう時は、気持ちが大事なんで、自分がそうしたいから、そうするしかない。選挙に出ようなんて気持ちはありません。もうただのジュリーです。正確に言うと、昔ジュリー、今ジジイです(笑)。でも山本太郎のように勇気のある38歳の若者がちゃんと打って出てくれました。」
 
 「以前から僕は、テレビで仕事がなくなったと聞いた時点で、何か力になれることはないかと思ってました。そうしたら声を掛けて頂いた。とにかく、今原発を止めることが一番大事なんだと。他のことは決まらないんだと。今日だって、地震が起こるかもしれないんですよ、そういう国に僕たちは住んでるんです。これはなんとかしなければいけない」沢田さんの力強いメッセージに聴衆が湧いた。
 
 「杉並区民でなくて残念です。区民なら一票入れられたかもしれない。昨日、どんなふうにやってるやろかと、ひそかに西荻で演説を聞きに行ったんですよ。ちゃんとチラシも渡されました。帰りに(推薦の)ハガキをもらって、切手を買って、電話帳を調べて杉並在住の知人、友人の名前を書いて封筒に入れました。応援の言葉をちょっとしか言えないのが残念です」。
 
 沢田さんの山本候補を見る目は暖かい。まるで太郎さんのことが心配でたまらない叔父さんのようだ。沢田さんは山本候補の肩を抱いて降壇した。反原発ソングを披露するかと思われたが、応援演説に徹した。演説が終わると、聴衆から「ジュリーありがとう」という掛け声と、拍手がわき上がった。
 
 山本候補は、「本当の表現者ですよね。自分の言葉にして、自分のメッセージにして。ちっちゃい頃見たジュリーですよ。ヒーローです」と感激しながら沢田さんを見送った。ジュリーが去っても、広場から人は去りはしなかった。再び山本候補の演説が始まった。

《文・中山栄子》

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