
「いま連れ戻せ」。集会参加者たちの目は、自分の家族が人質に取られているかのように真剣だった。=15日、テルアビブ 撮影:田中龍作=
イスラエル軍がガザに侵攻して526日が経つ(15日現在)。254人がハマスの人質に取られ、72人が死亡。今なお59人がガザに置かれたままだ(政府広報局)。生存者はその半数との見方もある。
人質の家族、恋人、友人は身を切り刻まれる思いだろう。
人質の奪還を求める集会がシャバット(ユダヤ教の安息日)明けの15日夕、テルアビブの博物館前広場であった。計測不可能。数千人規模の大集会である。
ステージには兄がガザから遺体となって帰って来たという女性や、まだ家族が人質のままというイスラエル市民が登壇した。
人質家族はネタニヤフ政権の対応に不満と怒りを募らせていた。
「今の政権は『もう少しの我慢を』と言っているが、何ひとつ前に進んでいない。もう我慢の限界だ」
「我々はネタニヤフ政権を信頼できない」
「全員の救出を今。一括救出と戦争停止を」
家族と集会参加者たちは「一括救出」を強調した。

=15日、テルアビブ 撮影:田中龍作=
~我々ユダヤ人はまたゲットーに戻る~
二十数年前のことだが、イスラエルが「テロリストの侵入を防ぐため」と称してパレスチナ地域との間に分離壁を建設し始めた。21世紀のアペルトヘイトである。
田中は急きょ、イスラエルに飛んだ。インタビューに答えてくれたユダヤ人男性の言葉は衝撃的だった。「我々(ユダヤ人)はまたゲットーに戻るんだよ」というのだ。
男性は家族とともに小綺麗な集合住宅に住んでいた。
パレスチナを囲い込む分離壁は、巨視的に見ればユダヤ人地域も囲い込んでいるのだ。ユダヤ人は自らゲットーを作ってしまったのだ。
イスラエルはガザと西岸でパレスチナ人に対する生殺与奪の権を握る。だが圧倒的な武力格差はテロを生む。テロでしか抵抗する術がないからだ。公共輸送機関やレストランでの自爆テロが象徴する。占領が続く限り、人質にも勝る凄惨な事件が再び起きる。
戦争は勝った方も地獄の責め苦に置かれるのだ…人質奪還集会を取材して痛いほど感じた。

22歳が23歳になり24歳になった。ネタニヤフ政権の救出の遅れを暗に糾弾しているようだった。=15日、テルアビブ 撮影:田中龍作=
~終わり~
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トランプの登場で限界点を失ったイスラエル軍の狂気をこの目で見届けるために、田中はパレスチナまで足を運びました。大借金です。御支援何とぞ御願い申し上げるしだいです。