
40日ぶりに自宅に戻った主婦は、変わり果てた我が家を前に呆然と立ち尽くした。=9日、ジェニン 撮影:田中龍作=
ウエストバンクの最激戦地ジェニンには初夏の光が降り注いでいた。通りの両側に露店がびっしりと並び、威勢のよい売り子の声が響く。
市場はほとんどが八百屋の露店だ。真っ赤なトマトや深緑のキュウリがアラブの陽ざしに映えた。
ここはホントに戦場の街なのか? 俺は間違った所に迷い込んだのではないか? 頭が混乱してきた。
だが100mも先に行かぬうちに別世界となった。生活道路は舗装がはがされ、建物も破壊されていた。紛れもなくイスラエル軍特有の爪痕だ。
一月末、イスラエル軍が難民キャンプに侵攻し住民(2万4千人=UNRWA調べ)を追い出したのである。

どこの国でも見かける露店。すぐ隣が戦場とは想像もできない。=9日、ジェニン 撮影:田中龍作=
ジェニンはハマスとイスラム聖戦とファタハが「イスラエル憎し」で同居する。当然、イスラエル軍との戦いは苛烈となる。
一昨年末の軍事作戦で、イスラエル軍は「武装勢力が患者を装って潜伏している」と称して、公立病院に踏み込んだりした。
公立病院が白兵戦の中心地となった。田中は白兵戦のど真ん中に飛び込んだ。武装勢力がイスラエル軍の主張するように病院を利用しているのか、見極めるためだ。

イスラエル軍が築いた土壁(写真奥)の向こうでは銃声が頻繁に響いた。手前には救急車が待機する。=9日、ジェニン 撮影:田中龍作=
一年余りが経った今、公立病院は健在だったが、すぐ先はイスラエル軍が高さ3m余りの土壁を作っていた。前方は見えない。
銃声が頻繁に響いた。田中が土壁をよじ登ろうとすると住民(男性)が大声で引き留めた。男性は「Jewish(ユダヤ人=イスラエル軍)」と言って、腕で銃撃のジェスチャーをした。
イスラエル軍とパレスチナ武装勢力との戦闘は、イスラエルによる占領がある限り続く。平和を謳歌する市場から100mと離れていない場所で。

イスラエル軍が舗装をはがし下水道管を破壊しため道路はぬかるむ。立ち往生しているのは給水車だ。いかにもイスラエル軍らしい人道援助の妨害である。=10日、ジェニン 撮影:田中龍作=
~終わり~
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トランプの登場で限界点を失ったイスラエル軍の蛮行をこの目で見届けるために、田中はパレスチナ取材を敢行しました。
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