
イスラエル軍は難民キャンプに隣接したビルを接収し駐在する。=9日、西岸トゥルカレム 撮影:田中龍作=
トランプの大統領就任演説(1月20日)から10日、経つか経たない頃のことだった。
イスラエル軍はジェニン、トゥルカレムを皮切りに計4か所の難民キャンプに侵攻した。
BBCなどによると4万人の難民が難民キャンプから軍事力で追い出された。難民が再び難民となったのだ。
田中はそのうちトゥルカレム難民キャンプ(2万7631人=UNRWA調べ)に足を運んだ。2023年末にも訪れたことがあるが、変わり果てたキャンプの姿は想像以上だった。
四十数日前には生活の音があった。人々のさんざめきがあった。夜ともなれば民家の窓には灯りがともっていた。
それが今ではゴーストタウンだ。人間の営みの一切を消し去った異様な静けさが一帯を支配していた。

かつての幹線道路もこのありさまだ。住民は自宅まで行くことも不可能である。=9日、西岸トゥルカレム 撮影:田中龍作=
イスラエル軍は追放した難民の帰還は認めないという。パレスチナ住民はたとえ帰還が認められたとしても帰りようがない。生活インフラが復旧不可能なまでにズタズタにされているのだ。
イスラエル軍は難民キャンプに隣接したビルを接収して、駐在している。(写真上段)
パレスチナ住民が帰還も復旧活動もできないようにするため見張るのだ。本気で追放するつもりである。
イスラエル建国(1948年)と第3次中東戦争(1967年)が作り出した大量のパレスチナ難民は、20世紀のディアスポラだった。
「21世紀のディアスポラ」はトランプがイスラエルの背中を押して始まった。
1期目のトランプは歴代大統領のなかで最も過酷なパレスチナ政策をとった。2期目はそれをはるかに凌ぐ過酷なものになりそうだ。

イスラエル軍車両はこの日も我が物顔で西岸を走り回った。=9日、ヌール・シャムス 撮影:田中龍作=
~終わり~
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トランプの登場で限界点を失ったイスラエル軍の蛮行をこの目で見届けるために、田中はパレスチナ取材を敢行しました。
大借金です。御支援何とぞ御願い申し上げるしだいです。