人目を盗んででも並木を伐採するのが行政の仕事なのだろうか。
警視庁神田警察署前の歩道両側には50m以上にわたってイチョウ並木が続く。関東大震災の教訓を残すものとして戦後植えられ、地元住民が育ててきた並木だ。
だが千代田区は「歩道を広くするため」などと口実をつけ並木数十本を伐採する姿勢を貫いている。
昨年4月には工事業者を入れ伐採を強行しようとしたが、住民がイチョウにしがみついて阻止した。
地元住民は伐採を止めるべく2件の訴訟を起こした―
パブコメや住民説明会など意見聴取の機会を持たなかった。千代田区と工事業者との契約は無効であり、工事費支出の差し止めを求める…という訴えだ。
イチョウ並木の伐採をめぐっては千代田区と地元住民との間で係争中だったのである。
ところが今年2月6日朝、さらにイチョウ4本が切られているのを出勤途中の住民が見つけた。
以後、住民たち(神田警察通りの街路樹を守る会=守る会)は深夜のパトロールを続けている。
きょう(11日)も午前3時まで並木に寄り添っていた。
大丈夫だろうと思って引き揚げた矢先の午前4時、千代田区役所前に工事用車両と作業員が集結しているのを「守る会」のメンバーAさんが発見。
Aさんはラインで仲間に知らせた。「守る会」の住民たちが現場に駆け付け、体を張って伐採を阻止したのである。
千代田区は街のいたる所にある防犯監視カメラで「守る会」の動きをチェックしているようだ。
住民たちは24時間気の抜けない態勢でイチョウ並木を守らねばならない。行政はいったい誰のためにあるのだろうか。信頼関係も何もあったものではない。
並木を伐採し工事業者と政治家が潤っても、憩いの緑はなくなる。
~終わり~