選挙の総大将が、選挙戦で首を はねられる かもしれない。そんな事態が神奈川13区で起きている。自民党の甘利明幹事長と野党統一の太ひでし候補(立憲)が接戦を繰り広げているのだ。
選挙戦最終日のきょう30日、甘利にトドメを刺すような動きがあった。元検事の郷原信郎弁護士が選挙区に乗り込んで落選運動を展開したのである。
郷原を落選運動に駆り立てたのは「あっせん利得」のウヤムヤである。URが発注する千葉県内の道路補修工事にからんで、URと建設会社(依頼者)の間の直接交渉に、甘利の秘書が介入し、交渉がうまく行くように「あっせん」したのである。見返りに甘利と秘書は多額の現金を受け取った。
事務所や大臣室で、現金を受け取った写真や音声まで公開されている。真っ黒けなのだが、安倍官邸にすっかり取り込まれていた検察は甘利を不起訴としたのである。
郷原は甘利の本拠地である大和市と海老名市の駅前でマイクを握り「甘利を(選挙で)通せば、神奈川13区の皆さんが、(自民党幹事長就任を)容認していることになる」と呼びかけた。
「公訴権を独占する検察が起訴しなかっただけ。潔白だったという訳ではない」。甘利と検察を断罪した。
郷原が「甘利を当選させてはならない」と呼びかけた海老名駅前では、1時間半後、甘利が街頭演説をした。郷原は地元の支持者に混じって甘利の演説に耳を傾けた。険しい表情で幾度も首を横に振った。秋霜烈日のバッジこそなかったが。
甘利は「チーム甘利」で日本経済が上向きになっているかのように幻想を振りまいた。一方で弱音も吐いた。「今度の選挙は悪質な選挙妨害に遭っている。だがこんなもの跳ね除けないと日本の政治が折れる」。
郷原に甘利演説の感想を尋ねた。「自分がいかに権力を持っているか。いかに政権に不可欠な人間かをアピールしただけ。なぜ落選の危機に遭っているのか、分かってない。傲慢になりきっているからだ」。権力者の犯罪を嫌というほど見てきた検事らしいコメントだった。
演説を終えた直後の甘利に田中は声を掛けた。「元検事の郷原弁護士が『あっせん利得を許さない』と言って、今ここに来てますよ」と。
甘利は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になったが、平静を装って会場を後にした。(文中敬称略)
~終わり~