著述家の菅野完がハンスト中に撒いた種は着実に実を結びつつある — 官邸前の読書運動だ。
呼びかけたわけでもないのに、菅野の姿勢に共鳴した人々が官邸前に来て本を読むようになった。菅野の姿勢とは、知性でスガ政権の反知性に立ち向かうことだった。
菅野が25日間にわたるハンストを終えて2週間余りが経つが、官邸前で本を読むことで、知性の欠片もないスガ総理に抗議する人々が後を絶たない。
朝出勤前に立ち寄る人、仕事を終えて来る人。休日を利用する人・・・生活スタイルに合わせてさまざまだ。
初期の頃から官邸前で読書を続ける男女2人に話を聞いた。
横浜在住の女性は菅野がハンストに入った翌朝(10月3日)、現場に駆け付けた。
「『スガ首相、学術会議の任命拒否』の報道に接した時、これはヤバイ、と思っていたら、菅野さんがハンストを始めた。私も何かしなければと考え神保町に向かった。買い求めたのは『戦争まで』(加藤陽子著)」。
女性は大学の研究員(理工系学部)だ。「国にペコペコしないと研究費が削られる」「普通に話せる社会であってほしい。ここ(官邸前)は私にとって普通の社会」。
彼女は淡々と語った。ツイッターのアイコンは「SUGALIN HATES WISDOM=スガ首相は知性(知恵)を嫌う」とプリントしたTシャツを着た自身だ。
「読書することは抵抗だ」。この言葉だけは宣言するように言った。
毎夕、仕事が終わると官邸前で愛読書のページをめくる男性(30代)がいる。週5~6回のペースだ。夕方ともなれば冷え込むが、1時間から3時間、本を読む。
「まさか週5~6回もここ(官邸前)に来ることになろうとは思わなかった」。男性は驚きを隠せない表情で語った。
法学部出身の男性を駆り立てているのは危機感だ。
「法の支配が(スガ政権によって)侵されようとしている。法治主義の形がい化は戦前の特高警察やナチスと同じ」。
「知性はこれ(上記)に対する防衛線」と外連味なく話した。
~終わり~
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