170㎝をゆうに超す女性が、巨体をゆすって小走りに駆け寄り頭を下げた。「先生、有難うございます」。
先生とは青森県保険医協会・前会長の大竹進医師。原発王国・青森の脱原発グループが結集する「進め!ドクター大竹の会」の代表である。
大竹は先の青森県知事選挙に立候補し、敗れはしたものの12万7千票を獲得した。市民運動のカリスマ的存在だ。
大柄の女性とは民進党の田名部匡代(まさよ)。参院・青森選挙区の野党統一候補である。
22日、青森市内で「大竹の会」が田名部を統一候補として国会に送り出す会を開いた。
大竹は日本の現状を人間の体に喩えた。「死に向かってまっしぐらのことをポイント・オブ・ノーリターンという。7月の参院選挙は日本の民主主義にとってポイント・オブ・ノーリターンだ」。
続いて田名部がマイクを握った。衆院(落選中)から参院への転身に「相当迷った」としたうえで参院選出馬に至った事情を話した。
「他の組織、政党が思いを寄せてくれた。皆が組織、政党関係なしに『アベ政治を許さない』と訴えてきた。使命なのではないか・・・」。
ドクター大竹の会、共産、社民は一貫して原発反対を掲げてきた。そんな彼らが脱原発を一時棚上げして、民進の田名部を推すことにしたのである。民進を支える連合の内部で絶大な力を持つのが電力総連であるため、異論もあった。
安倍政権を倒さないことには何も始まらないからである。
田名部の父・匡省(まさみ)は、農水大臣などを歴任した名だたる保守政治家だった。匡代が保守政治家のDNAを受継いでいることは、青森県の有権者がよく知っている。
民進、共産、社民を足しても集票力は自民にわずかに及ばない。
だが、保守政治家の田名部は自民から保守票を取って来ることができる。勝機は十分にある。
大同団結の副産物的な効果だ。(敬称略)
~終わり~