【ガザ発】ハマスからも追い立てられた ~中~
日曜日の早朝だった。ケマル・アワジャさんは戦車の轟音で目を覚ました。寝ていた子供たちは泣き出す。戦車のキャタピラーは家を踏み潰した。逃げ遅れた長男のエイブラヒム君(当時9歳=写真)は、イスラエル兵に頭と胸を撃たれ即死。妻のワファさん(34歳)も足を撃たれた。昨年1月4日、イスラエル軍の陸上部隊が侵攻してきた時の光景をケマルさんは忌々しそうに振り返る。
ケマルさん一家はイスラルの軍事侵攻が終わるまでアル・アトゥラ村から2キロ程南にあるベドウィン族の地区で過ごした。2週間後に停戦となったので村に戻り、テント暮らしを始めた。
それから4週間後のことだった。ケマルさん一家も、前稿(~上~)のシェイマさん家族と同様ハマスに立ち退きを命じられたのである。ケマルさんは頑として従わなかった。60家族のうち53家族がハマスの追い立てに従った。渋る家族はハマスにテントを壊され脅された。
ケマルさんはPA(パレスチナ自治政府)の職員で、ワイロにも手を染めていなかったため、ハマスも強硬な態度に出ることができなかったのである。
テントの前庭には色鮮やかな花が咲き、トウモロコシも実をつけるようになった。葉も花びらも束の間の平和をいとおしむかのように風に揺れていた。