野党が苦戦を強いられている今回の総選挙。多弱から抜け出して気を吐いているのが共産党だ。マスコミの世論調査では、(現有8)議席を倍増させそうな勢いである。
選挙期間中、最初で最後の日曜日となった7日、渋谷ハチ公前。地元東京7区と東京比例区の候補者が街頭演説をした。
応援弁士として立ったのは、元日弁連会長の宇都宮健児氏だ。「反貧困ネットワーク」の代表をつとめる宇都宮氏は、知る人ぞ知る貧困対策の第一人者である。マイクを握った宇都宮氏は次のように訴えた―
「子供6人に1人が貧困、母子家庭の2世帯に1世帯が貧困。前例にない生活保護の削減。生活保護の改悪を社会保障全般の(改悪の)突破口にしようとしている。ますます国民生活は苦しくなる。
消費税は生活が苦しい人にとって最も過酷な税制。(そうではなく)富裕層と大企業に課税する。この方針を提案しているのは共産党しかない」。
山下芳生書記局長は安倍内閣の右傾化を批判した―
「安倍さんは戦争に行きません。自民党と公明党の国会議員も行きません。行くのは若者たちです。にもかかわらず、若者には一言の相談もなしに、閣議だけで集団的自衛権の行使容認を決めてしまいました」。
ハチ公前で演説に耳を傾けていた聴衆に聞いた―
「安倍政権はこの2年間一体何をやってきたのかという思いだ。生活もちっともよくならない」。(30代女性・組合職員)
「非正規の若者が増えてきた。身近な友人がブラック企業で働いていたので、ブラック企業が気になる。ずっと共産党に入れている」。(区内在住・30代女性)
「初めて投票する。社民か共産に入れようと思っている。それ以外の党はみな右に傾いていると思う。選挙演説を聞くのは今日が初めて」。(20歳男性)
インタビューに応じた聴衆はいずれも、貧困や右傾化に不安と怒りを抱いているようだった。
筆者は共産党支持者ではないが、一貫して貧困問題に取り組み、反軍国主義の旗を掲げてきたのは、共産党と社民党だ。組織力のある共産党が支持を広げるのは、世情からして当然と言えよう。
自民党が貧困層を作り出し、軍国主義化を進める。共産党は貧困層に救いの手を差しのべ、軍国主義化に待ったをかける。
作用と反作用の関係だ。他の野党がダラシないと言ってしまえばそれまでだが、中道なき社会は危うい。