ロシア軍は電光石火でウクライナ軍基地を次々と陥れていった。だがウクライナ軍には簡単に投降できない事情があった。オリジナルは2014年3月。
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「投降しなければ攻撃する」。ロシアが最後通牒を突き付けたにもかかわらず、クリミア半島にはまだ態度を決めきれない部隊がある。ロシア軍が包囲するピレバルノイヤ基地の部隊がそうだ。
クリミア自治州の州都シンフェロポル郊外にあるウクライナ軍ピレバルノイヤ基地は、数日前からロシア軍に包囲されている。(数日前としたのはロシア軍とウクライナ軍以外に誰も包囲開始の日時を特定できないからだ)
軍用トラック、装甲車合わせて数十台を配備し、マシンガンを構えたロシア兵が基地の一部を封鎖する。
本営は封鎖こそされていないが、正門から30メートル先にはロシア国旗が上がる。ロシア軍の一個小隊が自陣と正門の間を行進しプレッシャーをかけた。
クリミアのアクショーノフ新首相(キエフはこれを認めていない)は、クリミア駐留のウクライナ軍に自らのコントロール下に入るよう命じている。「親露派である新首相の命令に従え」というのは「ロシア軍に投降せよ」という意味だ。
だがピレバルノイヤ基地の部隊はクリミア新首相の命令に応じていない。3日午後4時過ぎ(日本時間きょう未明)、基地のストロジェンコ・セルゲイ司令官が記者会見に応じた。日本と違って記者クラブはないので筆者も出席した。
投降しない理由について記者団から聞かれるとセルゲイ司令官は「キエフ(ウクライナ政府)に忠誠の宣誓をしているため、クリミア新首相の統率下に入ることは軍規違反となる」と説明した。
そのうえで司令官は「キエフ政府とクリミア政府が対等の交渉をして我々の帰属を決めてほしい」と語った。股裂きに遭った軍人の苦悩が表情ににじんだ。
クリミア駐留のウクライナ軍に対してロシア黒海艦隊が定めた投降期限は4日明け方(日本時間きょう正午過ぎ)である。