電撃的な立候補発表をした翌日、山本太郎が街宣の場に選んだのは、北千住(足立区)だった。
同区は生活保護世帯の数が都内で最も多い地域だ。貧困問題が政治の原点である山本らしい選択といえる。
街宣は事前告知されていなかったが、道行く人が次々と足を止め演説に耳を傾けた。スタッフが通路の確保に追われるほど多くの聴衆が集まった。
勤め帰りのサラリーマン、買い物の主婦、年金生活者、失業者・・・あらゆる層がソーシャルディスタンスを忘れて山本の話に聞き入った。
「みんな一票持ってるじゃないですか。世の中ひっくり返せるんですよ」
「私はこんな世の中でも絶望していないんですよ。みんなで変えられるんですよ。この国の希望は皆さんなんですよ」
「この国の最高権力者は政治家じゃないんですよ。大企業じゃないんですよ。皆さんなんですよ。あなたですよ。コントロールしましょうよ。ひっくり返してやりましょうよ」。
消費税が10%に上げられて弱りきったところにコロナが襲いかかった。庶民は瀕死の状態である。
追いつめられた人々にとって、革命を呼びかける山本の演説は、乾いた土が水を吸うように魂に染み込むのだろう。多くの人がすがるような目つきで山本の演説を聞いた。
私立大学職員(男性30代)は次のように感想を語った―
「優秀な学生が学費を払えずに辞めていく。一方で(官僚が)巨額の退職金を手に天下りする現実がある。政治は変わらないと思っていたが、山本は変えてくれるのではないだろうか。期待している」。
野党共闘を壊したと批判を浴びる山本だが、「消費税5%」も言えない既存の野党では救えない層が分厚く存在していた。
~終わり~
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