老後の命綱が再び死線をさまようのか。日本年金機構の個人情報漏えい事件は、全容の解明が急がれる。だが明るみに出ているのは氷山の一角のようだ。
民主党の山井和則議員らが、きょう、日本年金機構(杉並区高井戸)に乗り込んだ。筆者は同行した。
日本年金機構側は薄井康則・副理事長、阿蘇俊彦システム統括部長らが対応した。
日本年金機構への聴取の結果、職員が扱う端末PC27台がウィルスに汚染されていて、解析はまだ終わっていないことが分かった。
解析が進めば、漏えいしたのは125万件以上になる可能性がある。
塩崎厚労相は「労働者派遣法改正」を今国会で可決したい一心だったのだろう。5月28日に漏えい事件を知りながら、ダンマリを決め込んだ。
翌、29日に衆院厚労委員会で「派遣法改正」が審議されるからだ。
だが、漏えい事件の発覚を抑えきれなくなり、やむなく1日に日本年金機構に記者会見させた。
山井議員は「厚労省と日本年金機構による隠ぺいではないか」と指摘する。
官邸も一枚噛んでいるはずだ。5月8日にウィルスを察知したのが、内閣サイバーセキュリティーセンターだからだ。
第1次安倍内閣は「消えた年金」で崩壊した。内閣官房長官(当時)は塩崎恭久氏(現厚労相)だった。
官邸と厚労相が「二の舞は踏まじ」と3週間余りにわたって事態の収拾にあたったが、はじけてしまった。
日本年金機構は職員もほとんどが旧社保庁からのスライドで、薄井副理事長はじめ幹部は厚労省出身だ。建物は社保庁のまま。まさしく看板の付け替えだけだ。
筆者が乗り合わせた個人タクシーの老練ドライバーは、「ああ、元の社保庁ね」と言って迷わず連れていってくれた。
社保庁時代の危機意識なきユル~イ体質は“健在”だった。「消えた年金」同様、底なし沼の展開となりそうだ。
きょうの聴取で確認された経緯は以下の通りー
5月8日 福岡の職員がウィルス付メールを開封。
内閣サイバーセキュリティーセンター(NISC)が不正アクセスを察知→厚労省に通報。
年金機構はこの職員のPC端末のみインターネット回線と遮断。ウィルス汚染が広がる。
19日 警察に相談。
28日 警視庁から情報流出の連絡。塩崎厚労相が知ったとされる。
29日 全PC端末とネット回線を遮断。21日間もウィルス汚染が続いた。
同日 塩崎厚労相と厚労省は、上記のトラブルを知りながら衆院厚労委で「労働者派遣法」を審議。
6月1日 日本年金機構が記者会見、125万件もの個人情報漏えいを発表。
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