「今回もこのアキハバラで締めくくりたいと思います」。
衆院選最終日の13日夜、安倍晋三首相が「マイクおさめ」の場所に選んだのは、またしても秋葉原だった。オタクの聖地である。
安倍首相の左手後ろには「AKB48カフェ」、真後ろには「ガンダムカフェ」。安倍首相の知的レベルにふさわしい場所だ。マンガ好きの麻生副総理を伴っている。
「雇用が増えた。賃金が上がった」…選挙序盤戦で安倍首相は、アベノミクスの成果を吹聴していた。
「雇用は非正規が増えただけ。労働者全体の実質賃金は減少した」。野党などからウソを指摘された安倍首相は終盤、夢を振りまくようになった。
「中小企業、小規模事業者にも景気回復の暖かい風をお届けしていく。来年の4月、経済界は賃金を上げると約束しています。
賃金は上がって行きます。そして再来年の春、翌年の春もしっかりと賃金を上げていけば、消費税に対応できる強い経済力を手に入れることができる」。
演説会場の秋葉原駅前では、有志7~8人が日の丸の小旗を配って歩いた。Twitterの呼びかけで集まった即席の同志だ。1千本余りの小旗の費用は誰が出したのか、分からない。
打ち振られる日の丸の小旗を前に、安倍首相は聴衆を くすぐる ことを忘れなかった―
「これまで円高のため、いくら(日本が)良い製品を作っても中国や韓国に負けていたんです」。
聴衆からは「そうだっ!」の掛け声があがった。安倍首相は彼らの「嫌中・嫌韓」感情を刺激したのである。会場には殺気さえ漂った。
「安倍さんガンバレー」とかん高い声を飛ばしていた女性(30歳・主婦)は、「熱烈安倍ファン」という。
「『(日本を)こういう風にしたいから、こうしたんです』-夢と現実と希望を語ってくれるのは安倍さんだけ」。彼女は安倍首相の魅力をこう分析した。
現実を粉飾して単純なロジックで夢を振り撒く。不況の時代、国民を熱狂させる独裁者はいとも簡単に登場する。