安倍晋三首相が今夕、新宿駅西口で街頭演説した。事実上の選挙戦がスタートしてから東京で演説するのはこれが初めてだ。
アベノミクスの是非を問う、とまで言われる今回の選挙。海外の主要経済紙・誌はいずれも「アベノミクスは失敗」と結論づけた。BBCはStagflation(景気後退下のインフレ)と言う恐ろしい経済用語まで用いた。
日本のマスコミがアベノミクスを持ち上げてきたこともあり、今夕の演説で安倍首相は、アベノミクスがさも順調に行っているかのように強調した―
「有効求人倍率は20数年ぶりの高い水準になっている」「平均で2%以上給料があがった」「100万人の雇用を作った」・・・いいことだらけだ。
会社が正規を切って非正規を増やせば、有効求人倍率は増える。給料が上がったのは一部の優良企業だけだ。月給は上がってもボーナスがその分、減っていたりする。
首相の演説に耳を傾けていた聴衆に聞いた―
60代の不動産業者(男性・府中市)は「自分は株を買っていないので(アベノミクスを)実感できない」と語った。
「ニュースでは(アベノミクスが)いいように伝えられているが、景気回復の実感はない」。こう話すのは会社員の男性(20代・正規社員)だ。
今回の選挙では「集団的自衛権の行使容認」や「特定秘密保護法」も争点になる。
年金生活者の男性は「(秘密保護法は)困ったものだ。今の若い世代が困るでしょ。言いたいことが言えなくなるから」と顔をしかめた。
自民党幹部がテレビ局に事実上の圧力をかけた文書を出していたことも、選挙戦を左右しそうだ。
文書は「街頭インタビュー等で一方的な意見に偏ることのないよう公平中立、公正を期していただきたい」などと要求している。
たとえば有権者10人にインタビューして、8人がアベノミクスに否定的・懐疑的で、2人が肯定的だったとする。
それでもテレビ局は2対2で扱わざるを得ない。もともとテレビ報道は変な「バランス感覚」があったが、自民党からのお達しでアベノミクスに批判的な街の声は実際よりも少なくなるだろう。
「安倍官邸」は記者クラブメディア(新聞・テレビ)をフルに使って世論操作を展開するだろう。小泉政権による郵政選挙(05年)が「コミ戦※」と云われたように。
『田中龍作ジャーナル』は庶民の怒りと悲鳴をありのままに伝えていきます。
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※コミ戦
自民党コミュニケーション戦略本部の略。テレビのワイドショーをフルに利用して「小泉劇場」を演出した。